季節外れの‥‥13

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声をかけようとしたが、途中で止めて後ろからソッと回り込む。 「‥ど、どうしよ。おかしいとこないよな‥‥ 変な事ゆうてないよな‥‥ 来てくれるよな‥ゃって、友達やもんな。 大丈夫かな‥‥なんも要らへんッて、ゆうたよな。」 ずっと、小さい声でブツブツ言っている。 ‥不安で緊張してたんは俺だけやなかった。 せやな、コイツの方がナィーブやのに、緊張せんわけないわ‥‥ クスッ、と笑いが洩れると弾かれたように立ち上がる。 「い"ッ、井本!いつから‥」 驚いて真ん丸の目が俺を見る。 「お疲れさん。‥今来たとこやよ。なんやいね、挙動不審やで‥」 クスクスと笑いが止まらない。 「ぁ‥ごめん。」 「謝らんでもええやん。早ょおわったンやな。無理させたンとちゃうの?」 「いや、‥この間の、金曜日の代わりに早ょ帰りッて、‥‥」 「そっかぁ、ええ職場やね。」 隣に腰掛けて、吸うてもええか?と、訊いて煙草に火をつける。 「ぉん‥」 それを見て藤原も煙草を取り出し、一息つく。 「あれッ、お前吸うん?喘息とちゃうんかい。」 「‥やって、‥緊張してるから‥」 「はぁ?なんやねん。その理由‥‥遠慮せんでもよかったんや。」 携帯灰皿を取り出し二人の間に‥右手に持っていく。 黙ったまんまお互い一本吸い終えると、何をするでもなく座ったまんま手元を見ていた。 「(いつまで座ってるつもりやろか?)‥‥ なぁ、ソロソロ連れてッてくれへんか?」 立ち上がり声をかけると、身体がビクッとなり跳ねるように立ち上がる。 「ン‥、けど俺ん家ムッチヤ狭いし殺風景やで‥‥ ホンマになんもないから‥‥散らかってるし。」 目を合わせるでもなく俺の手元を見て前髪を弄る。 ‥誘てン?ッて、思てまうで。 「クスクス、ええやん。一人暮らしやったらそんなもんやろ?」
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