季節外れの‥‥13

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‥せやな、気にせんでもええよな。 井本を見ると、嬉しそに笑って俺の返事を待っている。 「ぉん、ほなっ、荷物自転車に積んでや‥そんで、これ持って。」 ケーキの箱を手渡す。 揺すんなや‥とゆうと、ハイハイと返事が返る。 「なんやねん。投げやりな返事やな。‥お前の誕生日ケーキやで。」 「マジ!ほなっ、揺すらへん。‥うっわぁー、ムッチヤ楽しみ。ありがとやで。」 真ん丸の目をして喜ぶので俺の心もウキウキしてくる。 二人並んで帰るなんて高校以来やな。 まぁ、あの頃はニケツやけど、ええ大人やし無理やな。‥ 何も話せんでも並んで歩くだけで昔に戻って、離れてたなんて信じられへんな‥ 丁度街並みは夕暮れ時で、目の前の山並みに夕日が暮れなずんでいる。 薄く青みかかったピンクに染まっていく。 河を渡る橋に差し掛かった時に沈む夕日を見た。 どちらともなく立ち止まり眺める。 「綺麗やな‥‥」 思わずゆうた言葉に、俺の方を見て目を細めて微笑む。 「せやな‥部活帰りに初めて見た、あの頃のまんまや‥」 ‥憶えてたンや‥‥俺とここで見た夕日を‥ 夕日に背中を押されながらの帰り道、歩き遅れてた俺に初めて気付き後ろを振り向いたんや。‥ あん時のお前は、今の俺みたいに 綺麗や‥‥ッて、呟いた。 「ぉん、全然変わらへんな‥」 心を見透かされたようで照れくさかった。アイツの顔を見ると昔のように、ニカッと笑い、 「お前も全然変わらへんな‥」 「クスクス、何でやねん。お互いに年とったわ‥」 擽ったい気持ちで歩き出す。 背中を追い続けるのじゃなく、隣に肩を並べて歩く。 「なんや‥夢みたいやわぁ。今こうして藤原と一緒に肩並べて歩くなんてな。」 「アハハ、ホンマやな‥」
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