季節外れの‥‥13

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無言で歩いた。‥決して気不味い訳やなかった。 横を向くとアイツの笑顔があって自然に自分も微笑んでいるのに気付く。 黙って一緒に居れる安心感‥ 「ほらッ、あそこのアパートの二階の端や。」 「ン?‥あそこなん?‥」 「ぉん、」 急に態度がおかしくなる。 「どしたん?‥」 「いや‥ムッチヤ近いなッて、思て‥‥ いつから住んでンの?」 「去年の暮れから‥年明けの転勤やったからな。まだ1・2カ月ッて、とこかな。」 駐輪場にとめて、荷物をかごからおろす。 部屋の鍵を開け 「狭て散らかってるけど‥‥」 「ぉん、お邪魔します、‥‥ン?‥」 入るなり匂いをくンッと嗅ぐ。 「なんや、甘い香りするなぁ。」 「まだしてるか?‥中々匂いとれんな。」 同じように匂いを嗅ぎ、甘い香りで昨日のキスを思い出してしまう。 ‥ンッ、と小さく吐息が洩れ気付かれないように、テーブルに無造作に荷物を置く。 ジャケットを脱ぎ寝室からハンガーを取ってきてかける。 「おーい、井本の服もかけとけや。」 声をかけると、ぉん、とゆう返事と共にジャケットが飛んできた。 「アホか、自分でかけろや‥」 文句を言いながらも、服からフワッと香ってくる井本の匂いに我を忘れそうになり、残ってた温かさに、胸の奥が軋む。 わざとらしく舌打ちをしながら俺の服と並べてかけた。 「なぁ、食材冷蔵庫へ入れんで?まだ鍋の用意でけへんやろ。」 ゆうよりも先に勝手に仕舞い込んでいる。 俺の生活圏に自然に入り込み、何故か勝手に俺の部屋に馴染んでいる。 「ウォッ、昨日のケーキやん。最後の食べてええ?」 皿を出してビールを開けてキッチンで立ち飲み始めた。 「お前なぁ、‥‥ 」呆れた顔で傍に行くと、ビールを手渡される。 「ほいっ、よぉ冷えてンで。」 「ありがと、ッて、ちゃうわ!今それ食べたら、バースデーケーキ食べられへんやろ。‥」
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