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「電気消そか?」
「そこまでせんでもええょ。‥‥何か照れ臭いな‥」
珍しく頬を紅く染めている。
「歌った方がええか?」
「‥ン?‥このまんまでええょ。‥」
そう言って黙りこむ。
暫く眺めて、ン!フゥー‥と、蝋燭を吹き消す。
自分の胸に秘めた仄かな焔が吹き消された感じがして、鈍い痛みが走った。
やっとのことで、
「おめでとう。‥随分長い願い事やな。‥」
と、言葉にすると
「ン?‥まぁな、今日から始まるお前との事や‥‥
また、一から口説き落とさなアカンから‥」
俺をみて目を細めて微笑み酒を煽る。
消されたはずの焔が灯り始めた。‥
「なっ、なんやねん、それ‥‥」
ケーキを切り分ける。
「‥やっぱ、俺、お前が好‥」
「はい!ケーキ。‥‥その続きはゆうなや‥」
無理矢理言葉を遮り、ケーキを差し出す。
「ハイハイ、しゃぁないなぁ‥‥ホンマに頑固や。」
そう言って白い歯を見せて笑う。
狡い、‥何で俺の一番好きな顔で笑うねん。
「‥‥///‥」
言葉を失ってしまう。‥
コトッコト‥‥コトッコト‥
土鍋から湯気が上がり蓋を取る。
俺は気を取り直して深呼吸をしてから井本にいった。
「‥友達やから‥‥なっ。‥ 」
理由がないと傍に居られへん弱い自分の為に念を押した。
「クスッ、わかっとるょ。やから‥悲しそな顔すんなや。
さぁ、具材入れんで?」
「ン‥何を買ってきてくれたン?」
「ふッふッふッ、藤原好きか?タラの白子やで。」
「うっわぁー、高かったやろ?これ後で雑炊したらムッチヤ、旨いで。」
「ゆうと思た。絶対、〆は雑炊やんな。」
井本が順番に入れている。
俺はぽん酢、アサツキ、紅葉おろしを用意しておしぼりを手渡す。
少し煮上がるまでの間、焼酎を飲みながら酒の話になる。
「どん位飲むン?」
「俺、イエノミばっかりやからな‥記憶が無くなるまでかな‥」
「あ、アカンやろ。身体壊すで‥‥」
心配そに身をのり出す。
「しゃぁないやん‥俺、一人やもん。」
頬杖をつきながら答える。
「う~ん、友達居てへんのかい。」
「酒を一緒ッてゆう友達は居てへんな。‥
それに、酔うたら寝むたぁなるし‥
一人の方が楽やし‥‥」
完全に微酔い加減で気持ちがいい。
フワフワした気分で話が弾む。
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