季節外れの‥‥13

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海老の殻を剥きながら、こんな甘い時間過ごせるなんてな‥と思い頬が緩む。 顔をあげると目を細めて微笑んだ井本と目が合う。 ‥見つめるだけで酔ぉてしまいそや。 海老を皿に入れて指を舐める。 「クスッ、やっぱお前‥‥色っぽいな‥ ほんのりと顔も紅いし‥ 目もともトロンとしてて‥ ‥‥かなり、酔い回ってんのか?」 「えっ?‥」 俺の口元をジッと見つめる井本がいた。 「店で飲まんでよかったわ。‥ そんなお前を、誰にも見せたない。」 真顔で囁く。 「‥ゆうなや、俺、‥(期待してしまう‥‥)」 口に出せない言葉を噛み締めるように唇を咬む。 ゆっくりと俺の頬に手が伸びて親指で唇をなぞる。 身体に心地よい痛みがはしり、‥動けなくなる。 熱病に侵されたように熱い瞳で井本を見つめてしまう。 少しづつ、‥心の距離が縮まる。 「咬んだらアカンッて、血が滲むやろ?‥‥可愛い唇してんのに‥」 「ンッ‥‥、手、離してや‥‥ンッ。」 ゆっくり頬から顎のラインに添わして手を離す。 「‥一裕‥‥」 名前を呼ぶ瞳はいとおしそうに揺れている。 「俺な、嬉しいねん。また二人きりで居れるんが、‥どうゆうたらええんやろ‥‥家の話はタブーなんやな?」 「ぉん‥」 「俺の気持ちは、かまへんねんな。‥」 何て返事してええかわからず酒を飲む。 それをOKの返事と解釈した井本は、話を進める。 「友達に戻ったわけはな、俺もお前の負担になりたないねん。 お前の気持ちが楽になるんやったら、かまへん。 けどな、俺は自分勝手で我が儘やねん。 お前が居らなアカンねん。 一裕が幸せでないと、俺も幸せやないねん。‥」 目が反らせない程真っ直ぐに、俺を見つめていた。‥そして、フッと笑うと目を細めていとおしそうに微笑む。
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