季節外れの‥‥13

16/26

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「ンッ‥‥フ、ァンッ、‥‥」 唇が重なると嬉しさと、安心で緊張の糸がキレた。 「‥‥ン?‥一裕?」 「スゥー‥、スゥー‥‥」 「クスッ、普通このタイミングで寝てまうか‥‥」 安心したように口元に笑みを浮かべて眠っている。 愛しくて頬にキスをしてベッドに運ぶ。 ソッと下ろすと、しっかり服の裾を握っていて離れない。 フッと頬が緩む。‥ 抱き締めたままで、 「ごめんな‥‥寂しい想いばっかりさせて。 俺が結婚した訳を訊いてくれたら‥‥ そしたら‥何もかも上手くいくんやで‥‥」 幸せそな寝顔に囁くが返事が返ってこない。 「無理矢理話してもええンやけど、そんなんしたらお前は‥‥今度は自分を責めてしまいそやから‥‥。 いつかは訊いてや‥ それまで手はだされへんねん。‥‥」 頬にキスを落とし、ゆっくりと指をほどき両手で包むように繋ぐ。 俺より、白い肌‥‥まるで剥き出しのナイーブな神経のように思える。 暫く、寝顔を見つめていたが毛布を掛けて手を離すと、薄く目を開く。 「ンッ‥‥たか‥ふみ?」 「起こしてしもたか?‥‥」 頬に手をやると、不安げに尋ねてくる。 「‥か、‥帰るん‥?」 涙目になり始めている。 「そやな‥‥もう、遅いもん‥な‥‥」 手を振り払い、背中を丸めて毛布を被る。 「何で?帰らへんで。さっきゆうたやんか‥ 今夜は一緒に居ろやッて、 テーブル片付けてくるから、待っててや‥‥」 毛布越しに抱き締め耳元で囁いても、頑なに 「ううん‥‥帰ってもええから‥ 気ィつけてな‥‥‥」 「クスッ、アホな事いいなや‥すぐ済むから、寝てたらええょ。‥」 もう一度強く抱き締めてからキッチンに行く。 水音が聞こえ始める。それを遠くに聞きながら、 ‥井本には帰りを待ってる人がおんねん。 さっきのは、酔っぱらいの戯れ言や‥ 段々と音が遠くなり、眠りに落ちていった。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加