季節外れの‥‥13

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片付けを終えてベッドに戻ると、隅の方で丸まったまま寝息をたてている藤原がいた。 魘されて、眉間に皺がより頬に涙の痕がついていた。 胸が締め付けられ指で涙の痕を消した。‥‥ 「ホンマにごめん。逢う度に泣かしてばっかりや‥‥笑てて欲しいのに。」 目にかかった髪をかきあげてやり耳元で囁く。 「一裕、‥‥今夜は一緒やから‥‥ 俺はどこにも行かへん。」 俺を探すかのように手が空をさ迷う。 その手を握って、甲にキスをする。 口元に笑みが浮かび、心地よい寝息に変わる。 暫く寝顔を見て、俺も隣に潜り込み頭に腕を回す。 規則正しい息遣いに合わせて髪を梳き、唇に指を添わす。 「‥ンッ、フゥッ‥‥た、かふみ‥ィ‥」 吐息のように名前を呼ぶ。 「‥アカン。襲いそや‥‥」 自傷気味に微笑みソッと抱き締めると、俺の胸に顔を擦り付けて、切な気に口が開く。 「マジ、エロ過ぎるッて、‥‥」 思わず抱き締める腕に力が入る。 「ンッ‥‥ンッ、」 腕の中で身を捩る。 「たか‥ふみ?‥‥」 虚ろなまま俺を見上げてふにゃっと笑うと、胸にスリスリと頬を寄せる。 「クスッ、可愛いな。‥明日仕事やろ。ちゃんと寝ぇや‥‥」 「ぉん‥‥」 そう言ってまた瞳を閉じる。 俺の存在を確かめるように背中に腕を回し微笑む。 そのまま見つめているといつしか規則正しい寝息に変わる。 「‥‥地獄やね‥。クスッ。」 このまま眠れる訳もなく、ソッと腕を離して起き上がる。 テーブルに行き煙草に火を点ける。 ふぅーっと、煙を吐き出しボンヤリ部屋の中を見回す。 殺風景な部屋‥‥ アイツはいままで一人で暮らしてきた‥と思うと、初めて自分が犯した罪に気づく。 ‥謝ったところでアイツの心を癒してやれん。 ゆっくりや‥ッて、思たけどな‥‥我慢できそに無いし。 ベッドの方を見て、 ‥一裕、‥‥我が儘ゆうてくれたらな、俺が全部叶えてやれんで‥‥
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