季節外れの‥‥13

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不安なんかなかった‥‥ 貴史の帰りを待つ事の幸せだけを感じられた。 もう、友達やッて、口先だけの誤魔化しなんかなんの役にもたたへんッて、気が付いた。 だから‥‥ 1つしかない《合鍵》を渡した。‥‥‥ 玄関で貴史を送り出して、一人きりの部屋で仕事に行く仕度をする。 行ってきますッて、ゆうて出掛けた。 行ってらっしゃいッて、ゆうて送り出した。 けど、気になる事が1つ‥‥ 「帰って昼飯作るん面倒くさいし‥」 何でや?‥‥誰も居らんから?‥‥ あんまり考えすぎもええ事無いけど‥ ソロソロ出かけようとした時に携帯がなる。 「はい、‥」 「俺、‥一裕まだ家か。」 「クスッ、‥あぁ、これから出るとこや。」 「ヨシッ、丁度良かった。‥ 一裕、行ってらっしゃい。」 「へっ‥?」 「気ィ付けて、頑張りや。」 そう言って携帯が切れた。 ‥‥?‥まさか、行ってらっしゃいゆう為に電話くれたんか。 自然に顔が綻ぶ。 いつもより早目に出て歩きながら、次に逢えるときの事を考える。 ‥次はプリンッて、ゆうとったな。手作りッて、無理やろか? 朝からアイツの事ばっかり考えてしまう。さっきまで一緒やったのに‥‥ 学校に着き昨日の礼を校長先生に告げて、保健室に行く。 着替え始めると義行が、 「先生、おはよう。昨夜はどうなん?‥‥なっ、何?その顔‥何あったン?」 俺の顔を見るなり側に駆け寄ってくる。 「えっ?」 「眼は赤いし、顔は浮腫んでるし‥‥ 泣き明かしたみたいやん‥‥」 心配げに尋ねる。 恥ずかしくなりうつ向くと余計に義行の心配を煽ってしまう。 「何かあったんやろ。ゆうてや。話聞くから‥‥喧嘩でもしたん?」 「‥ン?ちゃうから。‥心配せんでええょ。」 慌てて白衣を羽織りコーヒーを淹れる。 落ちるコーヒーを眺めて昨夜の話をする。 「あのな、ただ二人で鍋つついて酒飲んだだけで、なんもないから‥‥」 「じゃ、何で泣きはらした眼してるん?」 「‥‥ええやん‥‥」 そんな言葉で引き下がる義行ではなかった。
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