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‥何が悪いねん。しゃぁないやん‥アイツ男前過ぎんねんもん‥‥
心の中で言い返せない言葉がグルグル回る。
仕方なくコーヒーを飲んで、煙草を吸いに喫煙所に逃げ込む。
何事もなかったかのように、いつもの定位置に座り徳一を眺めている。
瞳に段々愛しさが溢れてくるのがわかる。
‥コイツはホンマに徳一が好きなんやな。
あんな目をして‥徳一は幸せやろな。
義行やったら‥‥
ずっと包み込んでくれるやろうし‥‥
ソコまで考えて、昨夜の抱き締められてた感触が甦る。
「ン‥‥」無意識に身を捩ってしまう。
‥貴史‥‥‥
机に戻ると、
「先生‥さっき、思い出してたやろ?」
と、笑われてしまう。
「ぅん、‥‥」
素直に返事すると
「相手の人幸せやな。そんなに思い出してもらえて‥‥」
義行の言い方が気になる。
「?‥何かあったン?」
「ちゃう、ちゃう。‥ただな、徳一は僕の事そんなに思い出してくれへんやろなッて、思ったら羨ましいなッて、‥」
「そぉか?俺からしたらお前ら二人の方が羨ましいけど‥‥」
二人顔見合わせて、変な感じやな‥と、コーヒーを飲んだ。
その日一日は、いつもより冷やかしが多かった。昨日の電話の件を聞き付けた奴等が入れ替わり立ち替わり覗きにくるのが、平静を保っている俺を見て残念そうに帰っていく。
夜には約束通り電話があり、何度も、好きやとゆうてもろて‥‥
幸せな気分で眠りについた。
朝も晩も電話があるが、まだ仕事が片付かないらしい。電話での会話も日を追って長くなる。
俺の声の様子から気掛かりな時は、昼も電話を入れてくれた。
そんな些細な事が嬉しくて、わざと寂しげに話してしまう事もあり、そんな時は決まって自己嫌悪に陥った。
気がつくと毎日に追われて1週間経ち町は、バレンタンデーでチョコ一色に染まっていた。
そんなある日、 珍しくお昼休みの時間に電話があった。
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