季節外れの‥‥13

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電話が切れて暫く考える。 仕事の合間に会いに来てくれるなんて思ってもせんかった事や。 普通は自分家に帰るべきやのに‥‥ でもな、それって‥‥‥ ‥‥‥‥‥不倫 ‥‥ 初めてその言葉が頭を過る。 既婚者のアイツを好きになるって事は、そうゆう事やろ? 俺が浮気相手‥ッて事になるよな‥‥ リングを弄りながらも、黒い感情が徐々に大きくなってくる。 どうしたらええンか全然わからへん。 ‥何やねん。 ‥‥けど、嬉しいのも事実やんな。 ボォーッとしたまま机に戻ると、義行が側にきて小さい声で 「どしたん?」 「‥ン、なんもない。まぁ又、あとで‥‥」 と、だけゆうてしもた‥ 相談するような事やないよな。‥ 最初からわかりきってた事やんか。ただ、目を反らしてた事実がそこにあるだけやんな‥‥ そんなん、わかってて鍵を渡したはずやのに‥‥ それ以上考えるのを止めた。 どんなに考えても、俺は貴史のもんやから‥‥ アイツが俺を好きやってゆうンやったら俺は‥ 知らず知らずの内に自傷気味に笑ってしまう。 今は、このリングを信じよう‥‥ 放課後仕事を粗方片付けた俺は義行が入って来たのに気付かない程ボンヤリ窓の外を眺めていた。 「先生?昼間は何なん。」 「‥ぅん、まぁ‥俺ッて、アイツからみたら‥‥ィや‥やっぱええ、何もない。 ‥ごめん、コーヒー淹れよか?」 腑に落ちない顔をしたままいつもの席に座り、俺の方に向き合う。 「言いかけて止めたら気持ち悪いやんか。ゆうてや。」 コーヒーを淹れて机に戻り渡しながら、 「‥けど、泥々した感情やし‥‥」 コップを両手で包むこむように持ちうつ向くと、 「昼間の電話で何か言われたン?」 「ちゃう、昼のは‥嬉しい事や‥やから余計に考えてしもたんゃ。」 「又、しょうもない事やろ?‥」 「ぅん、‥」 机に突っ伏した俺を見て笑う。
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