季節外れの‥‥14

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保健室に着き 「もう、ええから下ろせや‥」 「ン、‥ベッドまでな。」 そう言って、頬にキスを落とす。真っ赤になった顔から情けなさそな笑みが溢れる。 ゆっくりベッドに降ろして布団をかけてやり、前髪を梳く。 その手を払いのけられて、 「徳一‥‥」 「もっ、ええから、ほっといてや‥‥」 背中を向けて布団を被る。 「具合悪かったン?僕、気ィ付かんとごめん‥‥」 布団越しに後ろから抱き締める。一瞬だけ身体の力を抜くが、 更に丸まり拒絶する。 「ちゃうから‥義行は悪ないし‥」 言葉とは裏腹に、何故か、僕が何かを仕出かした気がした。 口ごもる徳一から、気持ちを訊きたくて、自分もベッドに上がり布団を捲る。 徳一を抱き起こして膝の上に抱かえる。 さほど抵抗も無く腕の中に収まるが、手をグゥにして人指し指を咬む。 「怪我してないン?‥」 「してへん‥‥」 「なぁ、僕の方ちゃんと見てや。」 「‥‥」 うつ向いたまま、どうしても視線を合わせない。 「徳一‥、ゆうてや。僕、そんなに頼りないん?」 「そんなんやないし‥‥」 「やったら、顔を見せてや‥」 「ほっといてや‥」 僕の腕を振りほどいて逃げようとする。 だから、余計にキツく抱き締めてしまう。 「アカンから‥僕は徳一を離さへんから。最近、徳一らしないやん。」 「‥一緒や。俺は変わってへん。」 そう言ってても、視線は反対の方向を向いている。
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