季節外れの‥‥14

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保健室に戻ると、ベッドの方からカーテン越しに話し声が聞こえてくる。 「開けるで‥」と、声をかけてから開ける。 「‥?」 徳一が泣いていた‥‥ いや、実際は泣いていないのだが、雰囲気や表情が泣いているように見えた。 側により、 「どや?気分は‥」 「‥‥」 義行に抱き抱えられたまま黙りこむ。 「徳一、どないしたんや。何があったんや?」 返事がない。義行の方を見てもよくわからない、困惑した表情を浮かべている。 ‥抱っこされてるし、喧嘩ッて、事もなさそやな。 少し徳一から話を聞くために、義行には悪いが席を外してもらった。 カーテンを閉めたのを確かめてから徳一に向き合う。 「倒れたンやで‥‥どこか打ったり怪我したりしてへんか?見せてや‥」 そう言いながらゆっくり頭の後ろや横、背中、腕、脚などを見る。 「痛ないから‥多分、打ったりしてへん‥」 その言葉にニッコリ笑い、 「そっかそっか‥良かったな。 吐き気はどないや?」 「ない。」 「ン、‥目の下に隈出来てんな。‥‥ 夜、寝れてないんか?」 頭を撫でながら優しく聞くと、 「うん‥」 「義行の事でか?」 図星を突かれてうつ向く。 髪をクシャクシャッとして、 「何や、いつもの元気はどないしたんや。」 涙目の丸っこい瞳が俺をみて揺らぐ。 「先生が‥‥わ‥るいんやんか。‥」 「俺?」 「義行と仲が良すぎンねん‥。何でなん? いっつもここで何話してンねん‥。」 「お前の事やで。」 心配を取り除く様に優しくゆうが、 「嘘ゆうなや!」 「嘘ちゃうて‥‥ほら、うつ向かんと目見て話しよや。聞きたいンやったらちゃんと‥‥」 情けない瞳が力無く俺を見る。
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