季節外れの‥‥14

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指で拭い、もう一度頬に手を置く。 「‥僕は一体何を見てたんやろ。こんなに近くに居ってる癖に、哀しい想いさせて‥‥」 俺を抱きすくめ髪にキスを落とす。 「僕はアホや‥こんなに想っててくれてンのに、全然徳一が想ててくれへんって先生に愚痴って‥‥」 「‥義行も不安やったんや‥‥」 嬉しくなり、義行を抱き締め返す。 「俺、‥‥」 想いが強すぎて言葉に詰まる。 義行の頭を挟み込むように両手を髪に入れる。 小さい声で、嬉しい‥‥と、告げた。 ‥はぁ、上手い事いって良かったな。 外で様子を窺っていた俺は、ホッと胸を撫で下ろす。 ‥まだまだ、これからやからな。 素直に想いを伝えていかなな。 好きな人に好きッて、ゆえる幸せを大事にせな‥‥ それを受け止める幸せも‥‥ そんな事を考えながら、グランドを眺めて昔をおもいだす。 俺もよぉ不安になったな‥ まぁ、今もやけど‥ その度にアイツに心配かけさしてしもて、 けど、あの頃のアイツは後ろに目があるんか‥ッて位に俺の事察してくれたな‥‥ 友達の中へはいつも俺を誘って、アイツの隣で何をすんのも一緒やった‥‥ 別に俺は一人でも大丈夫やったのに‥‥ もしかして、知らん間に徳一みたいな目をしてたんやろか? ‥そうかもな、いつも振り向いて俺を待っててくれてたしな。 「なぁ、藤原もいくやろ?」 「何や、お前行かへんやったら俺も止めとくわ。」 当たり前の様にゆうとった‥ アイツが決めてる様でいつも俺を優先してくれたな。 そんな奴やったから、安心して後ろ姿を追いかけてたんかも‥‥ ‥じゃぁ、今は? 今もや‥あの頃と変わってへん。 俺の事を考えてくれてる‥‥ 何や‥‥あの頃のまんまや。 考えながらグランドにいる筈のない後ろ姿を探していた。
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