季節外れの‥‥14

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二人でいつもの道のりを肩を並べて歩く。 ただ二人で当たり前の様に一緒に歩いて同じ家に帰る。 そして、当たり前の様に一緒にご飯を食べて、お風呂に入り一緒のベッドで眠る。‥ これが俺と義行の普通の生活、今まで考えた事も無かったがこの事がどんなに難しい事か知った。 その幸せが脆い硝子の上に在るのかも知れない。 だから、不安になる。‥‥ 玄関を入るなり、義行が後ろから抱き締める。 「ちょ、危ないやろ。ほらぁ、ケーキが‥‥‥」 「ジッとしててや。‥ ホンマに良かった‥なんもなくて。あの時は心臓が止まるかと思った。‥‥」 涙声になったまま、抱き締めて動かない。 「心配かけてごめん‥‥ けど、半分は義行のせいやからな。」と、茶化すが、 「‥ぅん、ごめん‥‥」と冗談に乗ってこない。 「義行‥‥中、入ろ?」 「ぅん、‥‥」 「俺、‥大丈夫やし‥」 「ぅん、‥‥」 「ケーキ、食べたいし‥」 「ぅん、‥‥」 全く離れる気配がない。 「走って来てくれて‥ありがと‥」 「ぅん、‥‥」 「俺を好きでいてくれて‥ありがと‥」 「‥ン?」 不意を付かれた義行が背中越しにビクッと力が入る。 「俺な、好きになったンが義行で良かった‥‥‥ 義行が俺の事好きになってくれて‥‥ありがと、 俺‥‥義行に護られてたんやッて、」 身体を反転させて正面をむく。 不思議そに俺の頬に手を置く。 「いきなり、どうゆう事なん?」 真っ直ぐな目で訊ねられる。 「やって、義行が‥‥」と、口ごもると 「全部ゆうてや。」 「ン?‥‥ケーキ食べたらゆう。やから、美味しいコーヒー淹れてな。」 腕をすり抜け、キッチンに行き冷蔵庫にケーキをしまう。 後から慌てて追いかけて来るが俺は気にせずそのまま二階に着替えに行く。
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