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部屋に入り着替え始めると義行もやって来ていつもの部屋着に着替える。
「なぁ、やっぱ紅茶がええ。」
「うん、美味しいの淹れるな。けど、夜ご飯は何がええ?」
少し考えてから、
「要らへん。ケーキ食べたら腹おっきなるし。」
「アカンッて、‥なんかないん?軽く饂飩とか、パスタとか。」
「ンっ?今夜はええ。‥それよりケーキや。早よ。」
ぐずぐずしてる義行の手を曳きリビングに下りていく。
俺はいつも通りにお風呂を掃除して湯を張る。
その間に紅茶を用意してくれていた。
俺の好きなオレンジペコ‥‥
「ウッワァ、ええ香りするやん。」
「せやろ。徳一好きやもんな、これ。買って置いて良かった‥。ミルクでええ?」
「おん。」
ソファに座って待っていると義行がティーポットとカップを持ってきて注いでくれる。
「ンンッ、やっぱ美味しい‥ホッとする。‥義行の紅茶メッチャ好っきや。なんか分からんけどやわらかいねん。‥」
「アハハ、誰が淹れてもおんなじやで。‥」
照れくさそに笑う。
そして、俺の飲む仕草を優しく見つめている。
‥‥だから、安心すんやろか?
でももしも、俺、義行が居らんかったら‥‥
もしも、先生みたいにスレ違ってしもたら‥‥
義行の笑顔を見ながらそんな事を考えると、涙が出てきた。
「徳一‥どしたん?どっか痛むンか?」
隣に座り涙を指で拭う。
「ううん、‥‥なんもない。‥」
「ない事ないやろ。泣いてンのに。僕、なんかした?」
「ちゃ‥うから。‥ごめん」
自分でも解らへん。‥けど、止まらへんねん。
背中を優しく手の平で擦ってくれる。その温かさが余計に涙を煽る。
‥どうしよう、この手が無くなったら‥‥
俺のもんや無くなったら‥
義行の隣に居るんが俺やなかったら‥‥
そんな事ばかりが頭に浮かんでは消える。
心配そな顔の義行が
「ゆうてや。‥‥まだ不安があんねんやろ?
約束したんやから、なっ。‥僕は何があっても徳一の傍に居るし、徳一のもんやから‥‥
安心してや。」
その台詞に胸が痛む。
だから、‥‥腹がたって‥‥‥
「じゃぁ、俺は?‥‥俺は誰のもんなん?‥‥
義行には俺が付けた印がついてある。‥
けど‥‥俺にはなんもなくて‥‥何で?
なんで‥‥なん?‥‥俺は‥‥」
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