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揺すらない様に大事に持って帰ったプリンを冷蔵庫にしまう。
取り敢えず、窓を開けて換気をして掃除に取り掛かる。
それから、夕飯の買い出しに出掛ける。自転車に乗って暗くなり始めた町並みを急ぐ。
途中、何人かの生徒とスレ違う。
‥ホンマや、案外生徒と会うンや。
つくづく周りを見ていなかった事に気づかされる。
スーパーで食材を買い込んで自転車に積んでいると、不意に後ろから声をかけられる。
「先生~!えらい買い込んで主夫やんか。」
振り返ると、家庭科部の生徒。
「ン?まぁ、色々な‥どしたん、お使いか?」
「嫌やわ。子供みたいにゆわんとって。」
と、ケラケラ笑う。
「晩ごはん何なん?」
「あぁ、蓮根のはさみ揚げしよかなって。」
「ええね。‥それでどうケーキ上手に焼けた?」
「あー!あれなぁ、ムッチャ甘かったで。」
「そうやろな、甘いレシピ渡したもん。」
何故か得意気に笑う。
「わざとか。何で?」
「先生あげたン?」
「うん。‥甘ッて、ゆわれた。‥」
「で‥‥」
「ン‥丁度ええッて、旨いって‥‥全部食べてくれた。」
意味あり気に、ンフフ‥と笑い、
「先生~愛されてんな。初めて作ったケーキ褒めてもろて。‥相手の人も優しいな。」
「‥はぁ~?」
「ええッて、隠さんでも。私は理解ある方やから。先生の相手ッて、彼氏やろ?」
目が点になる。
‥何で判るねん。まさか、見られてたんか?
「そんな恐い顔せんでもええやん。先生見てたら判るって。 女の人と恋愛してる感じとちゃうもん。‥」
「女の勘か?」
茶化す様にゆうと、
「せやね。‥泣き方がちゃうねん。
けど‥ええ人みたいやん。先生を受け入れてくれる感じで‥、今度はちゃんとしたの教えてあげるな。
バレンタインデーに間に合う様に‥‥
多分、次はもっと褒めてもらえるで。」
そうゆうて、ケラケラ笑う。
「なんやねん。‥何か相手試したみたいやん‥‥」
「ちゃうちゃう。駆け引きや。次、上手に焼けたら、俺の為に努力してくれたんやッて、感動してくれるで。
やから次は、ホイップクリームも足したらええ。
絶対に上手くいくから。
じゃぁ、先生また明日。」
「あぁ、気ィ付けて帰れよ。」
慌ただしく店に入って行く。
‥何か女の子は、強かやなぁ。駆け引きッて、そんなん考えた事もなかった‥‥‥
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