季節外れの‥‥15

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今までしっかりと俺に腕を回していたのに、その女の人を見て優しく微笑み俺から離れて隣に進む。 そして‥‥‥ 「一裕とはここまでや。俺はこれからはこの人と一緒に歩いてくねん。‥ お前はお前の道を進みや。 やから‥‥‥ さよならや、一裕‥‥」 そうゆうて俺の方を振り返らず歩き出す。 俺、一人‥‥置いたまま‥‥ ‥さよならって、‥ ‥嘘やろ‥‥?‥貴史‥‥ 声にならない。 足が動かない。 息が出来なくなる‥‥‥ けど、貴史を失いたく無くて‥‥ 叫んだ。 「まっ!‥待ってや!!‥行かんとってや! 貴史、俺を‥一人にせんとってや‥‥ 行くなやー!!!貴史ーー!」 ………‥‥‥ 「貴史ー!」 自分の声に驚いて飛び起きる。‥ 真っ暗なベッドの上。‥ ‥夢、やったんや。良かった‥ 嫌な汗をかいていた。 ベッドの上、手を伸ばしてソコにいる筈の貴史を探す。 真っ暗な中、目が慣れてきて姿を探すが居ない。‥ 布団にはまだ温もりが残っている。 「何でなん‥‥?」 フラフラと立ち上がって部屋の中を探す。 「‥た、かふみ‥‥?」 上着を掛けてあった筈のハンガーには何も無くて‥‥玄関には靴も無かった‥‥‥ ‥ほらな、期待なんかしたらアカンかってん。 俺より大事な人が居るねんから‥‥ ‥浮かれ過ぎた俺が悪いねん‥‥‥ ボタボタと涙が零れて前が見えなくなる。 真っ暗な部屋に一人きり‥‥ ‥なんや、‥夢と一緒や‥‥ 目なんか覚めへんかったら、良かった‥ キッチンでコップに水を汲み一口飲むとその場に踞ってしまった。 そして、徐々に嗚咽が洩れ始める。 「ウッ、‥ウッグゥ‥‥一緒に‥‥居るって、‥泊まるって‥‥ゆうたやんか‥‥ 」 声を出して泣いてしまった。 「ウッ、嘘つき‥‥貴史の‥嘘つき!」 「あぁ~?誰が嘘つきやねん‥‥人聞きの悪い。」 黒い人影が玄関から入ってくる。
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