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俺の傍まできてしゃがみこむ。
羽織っていた上着を脱ぎ、俺の肩に羽織らせて涙を拭う。
「泣きなや‥俺の知らん間にえらい泣き虫になってしもて‥‥」
「‥な、何でなん‥帰ったんと、ちゃうん‥」
目の前には困った顔で眉がハの字に下がった貴史が居た。
「はぁ?何で帰らなアカンねん。コーヒーこうて来ただけや。‥」
上着のポケットから缶コーヒーを二つ取り出し、ホラッ‥と手渡される。
「目覚めたらお前の寝息が髪にかかってこしょばいし、‥俺の事大事に抱えてるし、‥‥
ムッチャ、色気ありすぎて‥‥俺、寝られへんやん。かといって、寝てる奴に手出せんしな‥しゃぁないからコーヒーでもって‥‥」
悪戯っぽく笑って、俺の頭を撫でる。
「やから‥‥泣きなや‥なっ、」
「‥ぅん‥‥」
泣き止んだのを確認して
「でやな、誰が嘘つきやねんな‥‥ン?」
「やって、起きたら居らんし‥服も、靴もないし‥‥ごめん。」
「俺ッて、そんなに信用無かったんや‥」
「ちゃうから‥そんなんやないし‥」
慌てて取り繕うが、貴史は心底残念そな顔をしながらも冗談を交えて囁く。
「許して欲しかったら‥‥せやな、キスしてや。」
「///‥やっ、ムリや‥‥」
恥ずかしくてうつ向くと、更に追い討ちをかける。
「なら、抱いてええンか?。‥」
本気の貴史の心が見えた。
「‥‥」下唇を噛み締めたまま返事が出来ない。
切なさが胸を締め付け俺の鼓動が貴史を求めているように思えた。
「‥ごめん。冗談や‥‥そんな顔せんとっ‥「抱いてや‥‥」」
貴史の言葉を遮って呟く。
「キスしてや‥‥俺の全てに。‥今夜だけでええから俺を貴史のもんやって身体に刻んでや‥‥」
すがり付くように貴史の瞳を見つめてしまうと、想いが溢れて止まらない。
「怖いねん。‥お前がさよならってゆうて消えてしまいそで。
もう、逢えんかったら‥‥
全部、俺の妄想やったら‥‥
やから‥俺の身体に刻んでや‥貴史が居ったて事実を、」
「一裕‥‥」
「この部屋に居る時は俺はお前のもんやって‥‥
お前は俺のもんやって‥
夜はイヤや‥‥怖いねん。さよならってゆわれそうで、俺‥‥」
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