季節外れの‥‥15

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踞った俺を優しく抱き締めて辛そうに俺の名前を呼ぶ。 「一裕‥わかったから、俺が悪かった。また、追い込んでしもたな。 ‥ごめんな、この部屋やなくても‥いつでもどこでも俺には一裕しか居てへん。‥ 一裕しか‥一裕の事しか考えてへんから‥‥ 好きや、嘘やない‥‥愛してんねん。 やから‥さよならってゆうわけないやろ。」 俺の肩を抱き寄せて囁く。 「貴史‥‥俺にはお前しか居らへんねん。 ‥もう、さよならってゆわれんのが‥‥」 「ン。心配せんでも二度とゆわへん。 お前の進学の時、どんなけ後悔したか‥‥ あんな想いもう、したないしさせたない。 やから‥‥俺の事訊いてくれるか?そしたら一裕の辛い想いが無くなるから‥‥」 俺の背中を擦りながら、 「一裕の知りたい相手は誰や‥‥」 「ゆえん‥‥し、何でそんな事関係あんねん。」 膝を抱き抱え顔を隠す。 「ええから‥ゆえや。」 冷たくとも思えるキツい口調で、顔を上げさせられて無理矢理目を合わさせられる。 「何で‥‥そんな怖い顔すんねん。 俺が‥ゆうたらアカン事、ゆうてしもたからか? ‥‥抱いて、‥ッて、ゆうたから‥‥」 見開いた目から止まらない涙のせいで顔はグシャグシャになり言葉もうまく出てこない。 そんな俺に。‥申し訳なさそに自傷気味に笑い、優しく諭すように話す。 「ちゃう‥俺は一裕を受け止めてやりたいねん。けどな、‥‥このままやとお前は会った事ない人に対して‥‥ ずっと、罪悪感を持ったまんま俺に抱かれる事になる。 違うか?‥‥」 俺を見据えたまま辛そうに話を続ける。 「‥そうなったら、‥きっと今度は一裕から離れていってしまう。 そんなん嫌ねん。‥‥もう、離したないねん。‥ 一緒に居りたいねん。‥‥ やから‥‥なぁ、‥」 「‥‥俺、‥おく、さんの事‥‥知りたい。」 ようやく、言葉になった。
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