季節外れの‥16

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流れ落ちる涙が邪魔で貴史の顔が見えない。 「な、何で‥お前の事ほったらかしやねん。 何で‥おめでとってゆうてあげへんねん。 何で‥大事にせぇへんねん。‥‥ 結婚した癖に‥‥ 俺の方が貴史の事好きやのに‥‥ 俺の方が‥‥」 理不尽な言い分って事は判ってる。けど、ずっと思ってきたこと‥‥ 俺の涙を拭いながら、 「嫌な事‥ゆわしてしもたな。‥‥ あのな、もう‥5年経つねん。病気で亡くなって‥‥」 「‥!?‥」 驚く俺の肩を抱き寄せて囁く。 「‥やから、ホンマに気にせんでもええねん。 俺には、ずっと一裕しか居らへんねん。 相手はな、職場の先輩やったんや。 結婚したんはな‥」 「‥‥‥。 もうええ。‥‥‥‥聞きたない‥‥」 耳を塞ぎながら、 ‥何か、凄い嫌な言い方に訊こえる。 亡くなってはるから大丈夫なン。‥ じゃぁ、俺って‥‥何? 俺の事‥ずっと好きや無かったン?‥‥ 嫌な想いがグルグルと回り始めた。 「イヤや!訊きたない‥‥もうええ!」 「何でやねん!一裕、よぉ訊いてや。‥頼むから。」 両手を掴み耳から手を離される。 「そんなん訊かんでもわかるやん。 好きやないと結婚なんかせぇへんやん! ‥‥子供も‥居るんやろ?!‥‥ 勝手な言い分にしか訊こえへんやん‥‥ 亡くなってはるから大丈夫。‥って、‥そんなん‥‥俺‥‥都合のええ相手とちゃう!」 俺はその場から逃げ出し、ベッドに潜り込み毛布を被る。 「もうええから‥‥帰れや‥ もうこれ以上、惨めな想いさせんとってや‥」 後を追いかけて来た貴史が毛布の上から俺を抱き抱える。 ‥痛い位に‥‥身体が軋む‥ けど、追いかけて来てくれた喜びが溢れてくる。‥‥ 「ちゃうから、俺の言い方が悪かった。最初から‥出逢ってからずっと好きやねん。‥ ホンマに俺には一裕しか居らへんねん。‥‥好きやねん。 信じてや‥‥‥」 優しい声が響く。 嘘やないねん‥‥と、何度も繰り返す。
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