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頑なに断り続けてた先輩も、俺が真剣に子供の事を考えている事に気付いて、
「ありがとう‥‥」
そう、一言ゆうてくれた。‥‥
腕の中の一裕の顔を見ると、困惑しているようだ。
真ん丸な瞳で俺を見上げる。
「せやから、‥‥大事な人に再会出来たら、誤解されんようにコレを渡せ、って‥‥‥
先輩が内緒で作っててくれたみたいで、‥
俺の為やなくて、お前の為に‥‥
先輩からの感謝の気持ちと幸せにならなアカンよ。
って‥ゆえって‥‥」
胸につけたリングを握り締め、ゆっくりと顔を上げる 。
驚いて見開いた瞳にはもう、涙はなかった。
震える唇からは言葉を発する事ができなかった。
「聞いてくれるか?……全部‥‥」
そう尋ねると、考え込む様にリングを握り締め俯く。
「難しく考えンでもええ、‥多分、一裕が考えてる通りや。
‥‥そうゆう関係やねん。俺と先輩は‥
夫婦であって夫婦やなかった。
ただの紙切れの上の関係やねん。
其だけの事や…」
「‥‥」
暗い部屋の中で、時計の音だけが聞こえていた。
「‥‥もう、2時まわったな。‥遅いし、続きは今度にしよか‥いっぺんに話しても消化でけへんやろ‥‥」
髪に指を掻き入れて抱き寄せる。
ゆっくりと俺を見据えて尋ねる。
「‥ホンマに、‥ずっと、‥俺だけやったン?」
俺は、昔のように耳元で‥
「‥あぁ、ホンマや…信じてや‥‥」
そうゆうてやんわりと耳を舐める。
「‥ンっ‥‥ 貴史‥は、ずっと俺だけやったンやぁ…ホンマに、俺の事だけ‥‥
嘘やなかったンや…
俺しか居らへんって‥‥」
弱い刺激に身体をビクつかせながら、俺の服の裾を掴む。
「‥貴史、」
「ン?‥なんや?…」
俺の頬を掌で、 まるで俺が幻で消えて終わないかを確める様に挟む。
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