44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「ずっと、待っててくれたンや……」
止まった筈の涙が一裕の頬をつたう。
俺は、愛しくて思わず目を細めて微笑んでしまう。
「せやよ、‥最初からゆうてたやン。
逢いたかった‥‥って、
一裕だけや‥‥って、
諦められへン‥‥って、
何回ゆうたと思ってンや……」
「‥うん‥せやけど‥‥」
「信じてや‥‥
婚姻届を出した日に神社に寄ったンや、手紙を入れにな。
書いてあったンは、‥‥
一裕、俺な結婚した。ごめん、けどな、勝手やけどお前の事が好きやねん。‥お前を待っててええかな。
ずっと、待っててええかな。‥‥
俺が好きなンは一裕だけやし、忘れたり諦めたりそんなんでけへん。
もし、‥‥もしも一裕も同じ気持ちやったら‥‥
逢いたい。
って、書いて入れた。‥‥
一裕が帰って来たら神社に寄るって信じてたから、
けど、消えてしもてたらしゃぁないな。‥」
「‥そうやったんや。ごめん、俺‥全然‥‥なんも知らへんかった。
俺‥‥ずっと貴史に愛されてたんや。
ずっと、貴史のもんやったンや。
‥‥‥。
俺‥貴史の傍に居ってもええンやなぁ…
俺‥貴史の事愛してるってゆうてもええンやなぁ…
なぁ…もう、離さんとってや‥‥離れんとってや‥お願いやから‥‥」
昔の天神さんの時の様に俺に縋り付く。
溜まっていた想いをすべて吐き出すかの様に晒け出す一裕が、愛しくて、恋しくて、抱き締めていた腕に力が入る。
背中は擦りながら、
「楽になったやろ?…」
「‥ぉん‥‥」
「‥なぁ、その‥‥今もまだ‥俺に抱かれたい?…」
「‥‥ぉん‥。けど、その‥子供、居るんやろ?…」
「あぁ、居るで。けどな、変に勘繰らんでもええ。俺の子供やけど、血は繋がってへん。‥
変な言い方やけど、先輩の子供や。‥」
「けど、大事な貴史の子供やンな。‥‥」
「まぁな、ちゃんと紹介するから家に来てな。‥」
「‥そんなん、俺‥‥ 」
「大丈夫やって、俺の子供は理解ある子やから。
絶体仲良くなれるから。心配せんでもええ。‥」
最初のコメントを投稿しよう!