季節外れの‥16

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「ずっと、待っててくれたンや……」 止まった筈の涙が一裕の頬をつたう。 俺は、愛しくて思わず目を細めて微笑んでしまう。 「せやよ、‥最初からゆうてたやン。 逢いたかった‥‥って、 一裕だけや‥‥って、 諦められへン‥‥って、 何回ゆうたと思ってンや……」 「‥うん‥せやけど‥‥」 「信じてや‥‥ 婚姻届を出した日に神社に寄ったンや、手紙を入れにな。 書いてあったンは、‥‥ 一裕、俺な結婚した。ごめん、けどな、勝手やけどお前の事が好きやねん。‥お前を待っててええかな。 ずっと、待っててええかな。‥‥ 俺が好きなンは一裕だけやし、忘れたり諦めたりそんなんでけへん。 もし、‥‥もしも一裕も同じ気持ちやったら‥‥ 逢いたい。 って、書いて入れた。‥‥ 一裕が帰って来たら神社に寄るって信じてたから、 けど、消えてしもてたらしゃぁないな。‥」 「‥そうやったんや。ごめん、俺‥全然‥‥なんも知らへんかった。 俺‥‥ずっと貴史に愛されてたんや。 ずっと、貴史のもんやったンや。 ‥‥‥。 俺‥貴史の傍に居ってもええンやなぁ… 俺‥貴史の事愛してるってゆうてもええンやなぁ… なぁ…もう、離さんとってや‥‥離れんとってや‥お願いやから‥‥」 昔の天神さんの時の様に俺に縋り付く。 溜まっていた想いをすべて吐き出すかの様に晒け出す一裕が、愛しくて、恋しくて、抱き締めていた腕に力が入る。 背中は擦りながら、 「楽になったやろ?…」 「‥ぉん‥‥」 「‥なぁ、その‥‥今もまだ‥俺に抱かれたい?…」 「‥‥ぉん‥。けど、その‥子供、居るんやろ?…」 「あぁ、居るで。けどな、変に勘繰らんでもええ。俺の子供やけど、血は繋がってへん。‥ 変な言い方やけど、先輩の子供や。‥」 「けど、大事な貴史の子供やンな。‥‥」 「まぁな、ちゃんと紹介するから家に来てな。‥」 「‥そんなん、俺‥‥ 」 「大丈夫やって、俺の子供は理解ある子やから。 絶体仲良くなれるから。心配せんでもええ。‥」
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