季節外れの‥16

8/15

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
そのまま、俺達は眠ってしまう事も出来ずに、ただ毛布の中で仔猫がじゃれあう様に身体を温めあっていた。‥ ‥‥ン?‥あぁ、味噌汁の匂いや。 ベッドから寝不足の身体を引き離した。 キッチンでは既に、一裕が朝食を作っていた。 その後ろ姿を眺めていたら自然と愛しさが込み上げてきて、気が付けば背中から抱き締めていた。‥ 「‥おはよ、一裕‥‥」 「‥ 貴史‥おはよ。‥」 チュっ‥‥ ‥‥振り返り様に、一裕から余りに自然なキスをもらった。 「アハハ、ご機嫌さんやな。」 「当たり前や‥‥朝起きたら横に貴史が居って‥ ‥‥まだ‥‥」 少し顔を紅く染めた。 「目‥赤いで。寝不足か?… 」 「‥貴史もやン。仕事、大丈夫か?」 「あぁ、どうせ移動中に寝るし。」 「ソッかぁ、‥良かった。あっ、弁当作ってあんで。」 テーブルの上には当たり前の様に弁当箱が二つの並んでいる。 思わず、幸せやなぁ~…って、沁々感じた。 照れたのを悟られ無い様に、 「ありがとう。‥一裕の弁当美味いから楽しみや。‥何か手伝おか?」 幸せそうに微笑んで、 「ええょ。顔、洗っといでや。朝飯にしよや。」 俺は頭を掻きながら、言われたまんま黙って従った。 洗面所で顔を洗い鏡に映った寝不足全開の顔を眺める。 「アハハ、マジ目真っ赤や。」 だけど、幸せに頬が緩む。 こんなにスッキリした朝は何年振りやろか?‥‥と、考えて自分の単純さに笑えてくる。 Tシャツの隙間から昨夜の桜の花弁の様な印が無数に見える。 ‥クスッ、一体どんなけ付けたンや… せやっ‥‥ 「なぁ、一裕、チョッと‥‥」 キッチンに声を掛けると、 「何やねんな。歯ブラシ置いてあるやろ?…」 と、クシャクシャの笑顔で俺の傍に来る。 無言で一裕のTシャツを捲る。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加