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「そんな事ないで。一裕は俺の可愛い‥恋人やから‥‥。」
「‥ぅん、‥ありがと‥‥」
涙が滲む。
指で拭い取りながら、
「ほらぁ、‥泣きなや。ホンマに泣き虫になったな。‥
大丈夫か?一人で留守番出来るンか?」
わざと揶揄う様に子供扱いしてやると、
「出来るわ。‥
けど、出来へんってゆうたらどうすんねん。」
って、恥ずかしそうに微笑むから
「せやなぁ、しゃぁないから‥俺仕事辞めてまおか?」
と、言ってやった。
俺の言葉に目を真ん丸にして驚く。
「あっ!アカンって、大丈夫やから‥」
慌てて取り繕うさまが余りに可愛いかったので
「それやったら、お前を連れて仕事行こか?」
と、追い打ちをかけてやった。
呆れた様にクスリッ、と笑うと一声「‥アホか‥‥」と呟いた。
「‥でも、‥‥その言葉だけで充分や。
俺‥待ってられる。‥今までとちゃうし。」
そう言って俺の服の裾を掴む。
「しかし、‥お前も独占欲強いなぁ。‥まっ、昔のまんまで嬉しいで‥‥
こんなに付けてもらえるなんて思わへんかったし。
お互い冬場で良かったな‥あんまり目立たンで。」
「ぅん、せやな。外へ出られへんよな。」
と、声を出して笑い合った。
「ホンマに良かった‥‥。何かやっと、再会出来たって感じやな‥。」
「‥ぅん、‥‥。 」
改めて顔を見合わせて微笑む。
「さぁ、飯にしよや。‥」
「あぁ、仰山食べてや。‥お前、少食やから‥
仕事も忙しいンやろ? 」
「まぁな‥ボチボチやな。」
二人揃ってテーブルにつく。
テーブルには、お揚げさんの味噌汁とだし巻き、それに鰆の西京焼き。
「朝からマメやなぁ~。手間掛けすぎやン。」
「ンっ、やって貴史痩せてるやン。ちゃんと朝、食べてや。‥身体壊したらアカンから‥」
「クスッ、エライ心配性やな。」
お茶碗を受け取りながらの、何気ない日常。‥‥
お互いの然り気無い気遣い。
眼が合うと フワリと微笑むやわらかい時間。
「じゃぁ、‥頂きます。‥ 」
二人揃って食べ始める。
前回も思ったのだが、やっぱ一裕の料理は旨い。
「俺の料理より遥かに旨いな。‥けど、今度俺ん家に来たときは俺が腕によりをかけて作ってやるからな。」
「あぁ、期待してるな。」
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