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「ちょっと落ち着きや。僕等しか居らへんのやから、大丈夫やって。」
先程からパニック状態の俺を義行が宥める。
「誰も気ィつかへんって‥絆創膏つけたら余計目立つで。」
「そうやよなぁ、‥先生、今日一日蚊に刺された振りしたら?頬っぺたに指置いて、ポリポリって‥」
「ぅん、‥そうしよか。‥でも、冬やで、大丈夫かいな。」
鏡を見ながら恥ずかし気に、それでいて嬉しそうに頬に手を置く。
「‥‥しゃあないやん。そんなけ先生に隙が多いンやん。‥まっ、その位しとかな相手の人心配なんとちゃうん?
‥‥誰も先生の事狙わん様になるし‥‥」
徳一が一人言の様に呟く。
義行が複雑な顔で徳一の顔を覗き込む。
「‥‥なぁ、もしかして‥徳一もそう思ってンの?」
「えっ? いや、ちゃうよ‥‥」
「だからなん? 昨夜‥‥」
「もっ!もうええやん!‥その話は、‥今せんでもええやろ‥」
慌て話を切り上げようとする。
それでも、不安気な義行に
「‥一般論や‥‥俺のゆうた事は。‥俺等は俺等のやり方でええやん。なっ、‥‥やから、変にとらんとってや。‥」
「徳一‥僕に付けた印 見せた方がええンやったら、見える所に付けてもええンやで‥」
「なっ、‥何でやねん。ちゃうってゆうてンやん。‥俺は‥その‥‥
自己満足でええねん。って‥」
「そうなんや。僕はてっきり‥‥皆に見せた方が徳一が喜ぶンかなって。‥」
「‥はぁ‥‥(何で伝わらへンのかな‥‥)」
思わずため息が出る。
何故か義行は徳一の事になるとズレてしまう。
そんな二人に気付かず鏡を見つめていたが、諦めて虫刺されの振りをする事に決めた。
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