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部活動も終わり生徒達が家路を急ぐなか、俺は片付けを済ましトボトボと家路につく。
買い込んだ食材があるため、真っ直ぐ部屋に帰る。
鍵を挿し込み一人きりの暗い部屋に入る。
‥朝までアイツが居ったのって、ホンマやったンかな。‥
何故かもの悲しく、昨夜の事が全て自分の妄想のような気がした。
灯りを点けるとテーブルの上にメモが置いてあるのに気付く。
───洗濯物、忘れんと取り込んでや───
‥アハハ、何や、ホンマに洗濯してくれたンや。
ベランダを見ると俺と貴史のシャツが肩を並べてはためいていた。ただ、それだけの事なのに
‥せやなぁ、これが日常になるンやったら。俺は‥
他に何も‥要らへん‥‥
見た瞬間に思ってしまった。
たかが、シャツを干してあるだけなのにそれが 幸せな一般家庭の象徴であるように思え、肩を並べて一緒に旗めいて、輝いているように見えた。
いつまでも眺めている訳にはいかず洗濯物を取り込みたたむ。
二人分の洗濯物を眺めてアイツが居ったって嘘や無かったンや、とぼんやり考え頬に笑みが浮かぶ。
夕食の準備に取り掛かる為に冷蔵庫を開けると、プリンの箱がまだ入っていた。
‥何や、全部食べへんかったんや。気にいらんかったんやろか。
少し落ち込みながら箱を開けると‥
から箱の中にメモが一枚‥‥
───なんやねん。もう食べさしてくれへんねんや。 ‥冷たいなぁ。
次も期待してるし、
‥美味しいプリンやったけど、昨夜の方が
二人の時の方が旨かったで。‥‥貴史───
「‥‥ン‥。なっ、なんやねんな。‥‥」
昔と変わらない癖のある文字がある。
メモを捨てるに捨てられず棚の奥にしまってしまう。
‥アハハ、俺は乙女か。
自傷気味に笑いながらも、涙が滲み、アイツの優しさが胸を熱くする。
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