季節外れの‥‥17

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「アカン、‥ホンマに考え方が女々しくなったな‥」 一つ一つ花弁のような痕をなぞり、もう一度強く自分を抱き締めて、アイツに想いを馳せる。 ‥今頃、何してンやろか? 風呂からあがり頭を軽く拭いていると、鏡に情けない顔が映る。 ‥しゃぁないよな。俺、アイツの事好きやから‥‥ 一人言のように呟いた時に携帯が鳴る。 「もっ、もしもし。‥」慌てて声が上擦る。 「クスッ、お疲れさん。‥何慌ててンねん。」こらえきれない笑い声がする。 「あっ‥いや別に‥‥」 「ン? 声が‥‥また風呂やったンか?」 「ちゃっ、ちゃうわ!‥///」 「ハハハ、まぁええけど、風邪ひかんようにな。」 電話の向こうでクスクスと笑い声が続く。それを訊きながら服を着て脱衣所から出てベッドに座る。 「どや?今日はちゃんと仕事出来たか?」まだ笑いながら訊いてくる。 俺は訊きたくて仕方なかった声に、ドキドキし始める。 「ぅん、大丈夫やった。なぁ、貴史は‥‥寝不足大丈夫やったか?」 「ハハハ、アカン。むっちゃ眠かった。もうちょっとで乗り越すとこやった。」 「クスッ、アカンやん。」 心がむず痒くなるようなクスクス笑いの中での会話が楽しくて、何の意味もない会話を続けてしまう。 夕飯何食べた? 電車にこんな人居ったで。 今日見た夕日、聴いてた音楽‥‥ 会話を途切れさせたくなくて‥‥ それでもいつしか途切れて‥‥ 「なぁ‥‥一裕。俺、こんなん初めてやねん。」 アイツに似合わない切な気な声が訊こえる。 「‥ン? 何がや‥」 ‥いきなりどうしたンやろ。そんな声されたら俺、‥‥ 「何かな、‥ポッカリと心に穴が空いてるみたいやねん。‥ハハハ、変な話やろ。 一裕とうまい事いった筈やのに、‥‥ 不安になんねん‥‥心配でたまらんねん。お前の不安が移ったんやろか?‥‥ お前の事が愛しくて‥好きやのに‥傍に居らへん事が腹立つねん。 けどな、‥お前の事想えば想うほどな、‥‥お前の‥一裕の泣き顔しか浮かばへんねん。」 「‥‥‥」 「しゃぁない事やけど‥‥、俺‥逢うたんびにお前泣かせてるからな‥‥」消え入りそな小さな声が耳に響く。
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