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返事が出来ない俺に囁く様に続ける。
「今日のお前は何に笑って、何に傷付いて、何を想ってたんやろ‥‥って。
一人でホテルに戻ったら‥‥つい、考えてしもてん。
なぁ‥一裕‥‥‥訊いてもかまへんか?」
淋し気な声が俺に問う。
「‥何をや‥?」
「昨夜の事が嘘やと思い込んで落ち込んだり‥‥まさか、‥‥泣いたりしてへんよな。‥‥
笑ててくれてるよな。‥‥」
予想もしなかった言葉に声が震える。
「‥グッ‥ぅ‥ん、‥泣い‥たりしてへんし、‥グスッ‥俺、今、幸せやのに‥‥何で‥泣かなアカンねん。‥
アホな事ゆうなや‥‥」
嗚咽が混じり上手く返事が出来ない俺に、
「フッ‥‥何や、泣いてるやん。‥‥笑ててや‥」
「ちゃうねん‥‥俺、嬉しいねん‥‥
お前が‥俺とおんなじ事を想っててくれたンや‥‥って。
せやから‥‥俺‥‥」
「ソッかぁ‥‥ほな、やっぱ、俺とおんなじで‥
‥‥淋しいンや。」
「‥ン‥‥淋しい‥‥逢いたい。‥俺‥毎日逢いたい。‥貴史を毎日感じて暮らしたい。
もう、綺麗事なんか‥‥強がりなんかゆわれへん。‥」
縋り付いたらアカン事はイヤとゆうほどわかってる。
我儘って事も十分理解してる。
そんな事したらアイツが心配するって事も‥‥
けど、アイツが淋しいって感じて打ち明けてくれた事で堪え切れなくなってしまった。
嗚咽が止まらない俺に、更に優しい口調で囁く。
「‥俺も格好つけられへん。‥情けないけど、逢いたい。‥‥抱き締めたい。‥お前のくしゃくしゃの笑顔が見たい。
お前の声が訊きたい。
なぁ、‥電話してきてや‥‥
ほんでな、言いたい事全部ゆいや。‥
時間なんか気にせんでええから‥‥
出られへんかったら後でちゃんとかけ直すから‥‥
‥‥遠慮すんなや‥‥‥」
想像もして無かった言葉に「‥ぉん‥‥」としか、返事ができなかった。
離れてても、‥‥傍に居らんでも‥‥貴史を感じる事が出来る事に‥‥
俺は、幸せを感じた。
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