季節外れの‥‥18

4/16

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「ゆっくりと逢えるンや‥」 「あぁ、‥まっ、バレンタインは済んでしもたけどな。」 凄く残念そうに訊こえる。 「せやな、昨日やったもんな。‥」 逢いたい時に逢えない淋しさをヒシヒシと感じた。 暗い雰囲気を打ち破る様に、いきなり貴史が苛立った声をあげる。 「せやっ、一寸小耳に挟んだンやけど‥‥ 一裕、‥‥お前、昨日大盤振る舞いやったらしいな。」 「ン‥? どうゆう意味や?」 訳の解らない俺に更に苛々したアイツが電話の向こう側で大きく息を吸う。 「‥‥保健室で、‥‥チョコ配ったやろぉーーー!!」 耳がキーンとなる。 「‥ゥン、けど‥‥それは‥」 「なんっ! でやねん!」 「何でって‥やから、それは‥」 「早ゆえや‥‥」 言おうとしても言葉を遮られてしまう。こんな時は、何を言っても聞く耳を持たない。 俺は、段々と無言になってゆく。 「なぁ、‥俺が居るンとちゃうん?‥‥」 情けなさそな声が響く。 「‥逢えンのはしゃぁないとしても‥‥俺かて欲しいンやで‥‥ なぁ、何でそんな事すん‥‥ 知らんとでも思ってンか?‥‥」 余程ショックだったのか声のとーんが落ちる。 たかがチョコの話なのに妬きもちを妬くアイツに、可笑しくなってくる。 「クスッ、‥‥貴史の分はちゃんと置いてあるからな。 帰って来たら渡すから‥‥ それに、配ったンとちゃうし。御自由にお取りください、的な事やで‥ 籠にチョコや飴‥ちょっとした駄菓子を入れて置いただけやで‥‥」 「ホンマなん?‥」 恐る恐る訊くアイツに、 「せやよ。‥ンフフ、何を勘違いしてンねん。 しかし、誰に訊いたねん。毎回よぉ知ってンなぁ。」 「じゃぁ、生徒達に貰ったんは?」 「はぁ?‥何でそこまで‥‥」 呆れ返る俺を急かす様に、 「なぁ、どうしたン? 返事したん?」 「あれは、皆が俺を揶揄ってるだけやし‥ やから、その場で皆で開けて食べたし‥‥」 「そうなんや‥‥良かった。」 電話の向こう側で安堵の声が訊こえる。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加