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全くコイツはいきなり何を言い出すか解らへん。先生は少し困ったように考えてから
「邪魔者とちゃうんか?」とボソッと聞いた。
「ナッ‥ナンで? 」焦ってしまう。
「イヤな、何となくや‥」
‥中々鋭い先生や、
顔を紅くした徳一が、
「先生、この辺知らんやろ。やから、案内
したろかなって」
「そうやね、先生も一緒に‥」
言い出した二人の顔を見比べて、フワッと笑い。
「ありがと、助かるわ。アテにしてた店が潰
れて無くなってたから‥」
財布と鍵取ってくるからと部屋に戻っていった。
僕も、上着をはおり出掛ける支度をする。徳一は既に下に降りて待っている。
鍵をかけ、先生とゆっくり階段を降りる。
「先生、前にこの辺に住んでたン? 」
「いや‥あの学校の卒業生やねん‥」
あまり話したがらないように感じて、
「先生‥知られたないン?」ストレートに聞いてしまった。
驚いた顔をしたが直ぐに首を横に振り
「ちゃうよ‥色々あんねん」
待ちくたびれてイライラし出した徳一が、
「先に行くでぇー!オヤジ帰ってしまうやン」
自転車で行ってしまった。
ナンヤカンヤゆうてもオヤジ大好きッ子やから‥
後ろ姿を見送っていると隣の先生も目を細めて見送っていた。
懐かしそに‥寂しそに‥
いとおしそに‥
まるで片想いみたいに‥
「‥色々って‥恋愛関係なンや‥」
「中々鋭いな‥君もやろ? けど君と彼は両
想いやね。お互いを信じてる感じやな。」
「鋭いのは先生や。誰にもゆわんとって、
アイツの泣くとこ見たないねん。」
「ゆわんよ。誰でも好きな人を泣かせたな
いし、大切な想いを人から否定されたな
いしな。」
低い声で淡々と約束してくれた。
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