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照れた様に優しく笑うアイツが、「クスッ、‥あぁ、当たり前や。お前が一番先や。」と、呟く。
二人共、ただ普通の幸せを感じたかった。
別にドラマの様な愛は要らなかった。
目が覚めたら隣に居る幸せ‥‥
家に帰ったら「ただいま。」「お帰り。」って、‥‥何気無い会話。
一緒にご飯を食べながらの会話。‥‥
1日の最後には、「おやすみ。」ってゆうて、深い眠りに入るまでの間、温かさを感じさせてもらえる。‥‥
そんな些細な事‥‥‥
そう‥‥約束せんでも、逢える事‥
‥‥そんな些細な幸せが‥‥‥
ある木曜日の朝‥‥
いつもの様に電話があった‥‥が、声の調子がおかしい。
「どないしたン?‥‥何か辛そうやけど。‥」
「‥あぁ、風邪引いたみたいや‥‥何や、身体中の節々が痛いねん。‥」
時折、深い溜め息が交じり話をするのも辛そうだ。
「貴史、無理したンやろ。‥‥ちゃんと医者に診てもらわな。‥」
「‥あぁ、今日の予定は殆ど無いから‥‥行ってくるわ。‥」
バツの悪そな声で応えるので、余計に心配になる。
「なぁ、病院に行ったら電話してや。‥‥」
「‥ン‥。」返事すら辛そうに聞こえる。
「ぁ、いや、ええ、‥俺がかけるから。‥昼にでもかけ直すから‥‥やから、ちゃんと医者に診てもらってや。」
慌てふためく俺が余程可笑しいのか、嬉しいのか‥アイツの声が少し穏やかになる。
「クスッ、ホンマに心配性やなぁ。‥‥」
「しゃぁないやん‥‥出来るンやったら俺今すぐにでもそっちに行きたいの我慢してんやから。‥」
「ソッかぁ、‥‥ありがとな。
俺‥‥って、‥いや‥‥ン‥心配せんでもちゃんと医者に診てもらうから‥」
「ン‥そうしてや。‥‥それと、言いかけて止めるンはやめてや‥‥
何なん?」
アイツの飲み込んだ言葉が俺を不安にする。
「いや‥大した事やないから‥‥」と、少し笑いを含んで言葉を濁す。
「何やねんな。ゆえや!‥‥そうでないと、‥俺‥‥嫌な事ばっか想像してし‥まう‥‥やん‥‥」言葉が詰まり、上手く話せない。
「クスッ、‥ホンマ、心配しぃやな。‥まぁ、そこが一裕のええとこなんやけどな。‥‥
あんなぁ、俺って、‥‥ホンマ、お前に愛されてんなぁ‥‥って、想ただけやで‥」
落ち込んだ俺を包み込むように電話の向こう側で笑った気がした。
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