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帰り支度をしていると携帯が鳴る。
「はい。」
「ン‥俺や。そっちに着くの6時半位になるで‥‥」
「ぅん、わかった。駅まで迎えに行くから無理すんなや。‥せやっ、何か欲しい物とか無いか?」
余りに静かに義行が息を潜めて居たので、訊かれている事を忘れてしまう。
「‥せやな、林檎‥‥食べたい。あと、‥グレープフルーツ。」
「ン‥林檎とグレープフルーツやな。‥ちゃんと買っとく。気ィつけてや。
‥あんまり辛かったら途中で降りたらええで。俺、そこまで迎えに行くから‥‥」
「ありがと、‥そうゆうてくれるだけで、‥何や安心するわ。」
‥俺もや、素直にそんなんゆうてくれるだけで安心するねんで。
「じゃぁ、ホンマに気ィつけてや。‥あっ、それとちゃんと連絡しとくンやで。」
「ン?‥あぁ忘れてた。‥アハハ。」
「アハハやないやろが‥心配してるやろうに‥」
「やって、俺家に帰らへんやんか。‥
お前ン家で、二人きりで過ごすやん。‥
まっ、俺、寝たきりやけどな。やから、しっかり看病してや。」
そうゆうて笑う。
「寝たきりって‥‥」
「言い方が悪かったか‥‥ごめん、けどまぁアイツ等に余計な心配かけたら‥‥きっとお前ン家に押し掛けて来るやろうし。
俺、そんなんイヤやし‥‥折角、二人きりやのに邪魔されてたまるかって‥‥」
「///‥‥ン‥わかった。‥‥ホンマに無理せんと帰ってきてや。」
「あぁ、座れるので帰るし。‥」
段々と甘く囁く様に話すアイツの声だけが俺の心を支配し、完全に義行が側に居るのを忘れてしまい アイツの「‥一裕‥‥好きや、‥早よ逢いたい。」と、ゆう言葉に「俺もや、‥‥好きや、‥早よ、逢いにきてや。‥待ってるから。‥」と、いつもの様に答えてしまった。
電話をきり、後ろを振り返ると義行が、
「大丈夫、僕は何も訊いてへんから。」と、笑う。
‥嘘や、絶対にコイツ訊いてたよな。‥///‥
しもた事した‥‥
ムッチャ恥い事してしてたぁ‥‥‥
恨めしげに横目で睨むと、
「先生、早ょ帰らへンの? スーパーよるンやろ?‥クスッ、忘れんと林檎とグレープフルーツ買わなアカンで。」と、笑うから俺は耳まで真っ赤にして怒鳴ってしまう。
「ヴゥーーー!!うっさい!やっぱお前、訊いてたやろぅがぁー!!お前も早ょ徳一のとこへ行けや。」
ガラッ!ガラガラ。
少し乱暴気味にドアが開く。
「何やねん、愉しそうに‥‥仲が良すぎンねん‥」 口を尖らして俺を睨む。
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