季節外れの ‥‥19

2/12

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
学校からの帰り道、先生が僕達に気付かないまま急いで通り抜ける。 「先生、今日はえらい急いでンな。」 「ぅん、何か買い物が多いみたいやで。電話で林檎買っておくってゆうとったし。」 先生の話をしながら暮れなずむ空の下を二人で帰る。 「そうや、おじさんから何か連絡あった?」 「何なん、急に‥‥また、妬きもちか‥‥」思いっきり不信感を露にする。 「‥ゔー‥ちゃうからゆわんとってや。‥」 「まぁ、ええけど‥‥」 ポケットから携帯を取りだしチェックするが、着信はおろかメールもない。 「だいたい、義行と一緒の時はオヤジの事は話せぇへんって約束とちゃうン。」 怒っているのか口調がキツい。 「ン‥そうやけど‥‥言いづらいンやけどな、‥‥確信は無いンやで。 おじさんの名前‥‥貴史ってゆうてたよな。‥」 「そうやけど‥‥それがどうしたン。」 「先生の相手な、貴史ってゆうンやて。」 「いつ訊いたン。」 「さっき電話しててン。‥‥ よっぽど相手が心配やったンやろうな、思わず名前呼んでしもたみたいやねん。‥ ホンマ、可愛いて憎めんよな。」 と、まるで惚れているように話をするので、更に口調がキツくなる。 「フーン‥‥で、義行はその貴史さんと俺のオヤジが同一人物って思てンや。」 「ぅん。」 フゥーっと大きく溜め息を付いてから 「何でそんなに先生に入れ込むン? ‥‥俺‥‥何かイヤや。」 そう言って黙り込み、一人先に歩きだす。 それ以降は僕がどんなに話かけても返事がなく、無言のまま歩く。 ‥怒らしてしもたみたいや。 徳一、見かけによらずかなりの妬きもち妬きやから‥‥ あぁー、先にちゃんと説明しとけば‥‥ 後悔しながら徳一の後ろをトボトボ歩く。 いつもより長く感じた気不味い雰囲気のなか家に着くと、玄関で徳一が振り返り僕にゆう。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加