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「徳一‥‥入るよ‥」
返事がなく物音も無い部屋に入ると、床で泣き疲れて眠ってしまった徳一がいた。‥
膝を抱える様に丸くなって、親指を弛く咬んで‥‥
まるで小さな子供が泣き疲れたように‥‥
目には涙の痕が付いていた。‥‥
‥徳一、ごめんな‥‥
胸を締め付けられ、思わず徳一を抱き起こし腕の中に抱き抱えた。
指でゆっくりと髪を梳く。‥‥
腕の中に居る顔を見ながら
‥僕は、‥自分で思ってた以上に徳一の事が‥
好きなんや‥‥離したない。‥
眠ってしまった徳一に想いを伝える。
「なぁ徳一‥‥ホンマに好きなんやで‥
僕が悪かったって事、よぉわかってる。‥徳一にあんな事ゆわしてしまう位傷付けてしもたンやから‥‥
ごめん‥‥ホンマにごめん‥‥許してもらえるなんてムシのいいこと考えてへん。‥
けどな‥僕の事嫌いになったとしても、一緒に居りたないとしても、‥‥
僕には徳一だけやねん。‥
僕は徳一だけのもんやから‥‥
やから‥もし、‥もしも、傍に居ってもええンやったら‥
呼び出してや。‥‥
僕は、どこに居っても、何をしてても、‥傍に‥
‥‥傍に、‥逢いに来るから‥‥‥
‥今日はこのまま帰るな。
もう、これ以上徳一を、哀しませたないから‥
‥ごめんな。」
ゆっくりとベッドに寝かし僕は机の上にメモを残す。
最後にもう一度髪を梳き、キスしようとしたが、‥‥出来なかった。‥
そのまま耳元で「おやすみ。‥」と、囁き部屋のドアを締める。
外に出て灯りの灯る部屋を見上げて歩きだすが、帰ることも出来ずに、‥離れた場所からいつまでも眺めていた。
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