季節外れの ‥‥20

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慌てて駅前まで車を飛ばしロータリーに止め改札から出てくる人波にアイツの姿を探す。 ‥早かったか。でも‥待たすよりもええか。 思ったよりも人が多い駅前で部活帰りの生徒達に会うが気にも留めずに、ハンドルを抱え込む様に前傾姿勢のまま改札を凝視する。 ‥もう、そろそろ約束の時間やのに‥‥ 携帯を開いては閉じる。 ‥連絡もないし‥‥ アカン、何や、‥悪い方ばっかりに考えてしまうやん。‥ まさか、途中で何かあったとか、‥‥ 車の中でイラつきながら親指の爪を噛む。‥約束の時間はとうに過ぎて‥‥ ‥変や、遅すぎるやん。‥別に電車が遅れてる様子もないし。 下車してきた人が波の様に寄せてきては引いていく。その繰り返しが何回かあった後、人のまばらになった改札にゆっくりとアイツの姿が見えた。 俺は弾かれた様に飛び出し駆け寄る。 「‥お帰り。‥大丈夫か?ごっつぃ、しんどそうやん。‥‥」 アイツの荷物を持ち肩を貸す。 「‥悪い、‥腹痛ぁてトイレに居ってン。」 「何や、そうやったんか。‥心配したで、あんまり遅いし‥」 助手席のドアを開けて座らせる。 シートをゆっくりと倒して膝掛けを掛ける。 「ハハハ、何や手慣れてンな。‥」 「そやろ、伊達に保健医してへんで。」 言いながらシートベルトを腰に回すと、身体が重なる様に近くなり、不意に襟首を掴まれ触れるだけのキスをされる。 「///‥アホ、‥しんどいくせに、‥」恥ずかしくて悪態をつくが、 「伝染るとか、‥誰か見てるとかの心配はせぇへんのや。」と、笑う。 「誰が見ててもかまへんし、こんなんで伝染らへん。‥もっと、‥‥濃いやつやないと。‥///‥」 「濃いやつがよかったンか?」 「アッ、‥アホか‥」 と、微笑みながらドアを閉める。辺りはすっかり暗くなって気温も下がり始めている。 白い息を吐きながら運転を始めるが、辛そなアイツは浅い呼吸を繰り返している。 「晩飯は?」 「‥いや、食べてへん。昼も、‥」 「アカンやん。何か腹に入れらなな。‥薬は?」 「朝と晩、‥」 短い返事でも返してくれるのが堪らなく嬉しい。
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