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「熱は?」
「あるかもな、‥」
「お前は、あるかもなって‥‥」
「まぁ、ええやん。後で一裕が診て看病してくれるンやろ?」
「///‥ぅん。」
どんなにしんどくても、俺の方を向いて笑ってくれる。
久しぶりの笑顔に照れて、俺は前方の信号機を睨みつけてしまう。
アパートに着くと俺は取り敢えず、荷物を運びこむ。
肩を貸しに車に戻ろうとすると、階段の所まで歩いて来ていた。
「ちょっ、‥待ってぃってゆうたのに‥‥しんどい癖に‥‥ホラッ、肩かすから。」
「大丈夫や、この位なんともないって。」
意地を張って階段を上るが、やはり途中で息が上がって足元がふらつく。
それでもなんとか部屋に着き、予め用意してあるベッドに寝かす。
「服だけでも着替えよや。」
「‥あぁ。」
「スェットでええよな。‥寒ないか?」
ゆっくりと上着を脱がしてシャツに手をかける。
余程辛いのだろう、動きが鈍く俺にされるがままになっている。
アイツの素肌に触れると思いの外、熱い。
‥かなり熱あんな。‥
疲れているのだろう、既に眠りに入りかけている。
温かいタオルで顔を拭うと、薄く眼を開け安心したように微笑み、「‥ええ気持ちやな。‥」と、呟く。
「‥お粥さん炊くから、一寸寝てぃや。‥」と、声をかけて食事の仕度を始める。
‥お粥さん炊いて、後何がええかな。‥林檎を少し擦って、‥桃缶冷やして、アッ、グレープフルーツもやな。
あれこれ思案している間にも土鍋からは湯気が上がり始めた。
お米の炊ける良い香りがして、鮭の焼ける香りがして、‥‥
‥貴史には、悪いけど、‥‥俺、嬉しいねん。
お前の世話出来るんが‥‥‥
知らず知らずの内に頬が緩んでくる。
笑みを浮かべたままで、土鍋をテーブルに置き胡瓜の浅漬け、梅干しを添える。
粗方用意を終えるとアイツを起こしに行く。
先程よりも少しましになったのか、スースーと寝息をたてて眠っている。
おでこに手をあてると、まだまだ熱がありそうだ。
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