季節外れの ‥‥20

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「おはよ。‥開口一番にオカマはやめてや。」と笑うと、 「まぁ、落ち込んでるよりはええわな。‥」 そうゆうて頬にキスをする。 「朝飯の前にシャワー浴びてくるから。‥ なぁ、着替え出しといてや。」 風呂場に向かいながら服を脱ぎ捨てゆく。 俺は、着替えを持って後を追いかける。 「ちょっ、‥脱いだら籠に入れといてや。‥」 「ハハハ、奥さんみたいやね。」 そうゆわれて紅くなる。 「アッ、アホ!」 「何やねん、嫌なんか?」 「い、‥嫌やない‥‥その‥貴史のやったら‥‥ なりたい。」 紅くなりながらも素直に今の気持ちを言葉に表す。 「アハハ、心配せんでも昼過ぎには公認や。」と嬉しそに笑う。 俺はその声を訊いて風呂場を後にする。 ‥そうやんなぁ、‥不安な事より、嬉しい事の方が多いやんなぁ。 そう思うと自然に頬が緩む。 昨夜は夜中に眼が醒め不安に駆られたのが不思議な位だ。 昨夜‥俺がボォーっとベッドの隅で膝を抱えていると、起きてきたアイツが 「何や、暗い顔して‥」と心配気に訊ねてきた。 「俺が元気になるに連れて、何でお前は落ち込んでゆくんや?」 「そんな事あらへん。‥‥」 出来る限り明るく装うが、つい唇を噛んでしまう。 アイツは傍にきて俺の唇をなぞり頭を抱き抱える。 「嘘‥‥つくなや。‥なんかあったンやろ?ゆうてみ。‥」 「ううん、‥ホンマになんもない。‥」 「アホか。‥俺に強がりなんか通用せぇへんわ。‥ゆえや。」 「‥ぅん‥‥グスッ。‥」 泣きたい訳や無いのに涙が滲む。 「ナーバスになってンか?‥‥ ハハハ、マリッジブルーやん‥‥」 言いながら俺の髪を梳く。 「大丈夫やって、‥‥でもな、泣きたい時は一人で泣いたらアカン。 俺の傍にこい。‥俺が‥‥俺だけが一裕の涙を拭ってやれるンやからな。 なんも心配せんでもええから‥‥」 いつも以上に穏やかな優しい声色で俺に囁く。 「‥でもな、‥‥」アイツの顔を見上げて言葉を発するが‥‥不安な気持ちが溢れて言葉に詰まる。 「でも‥‥なんや?‥子供の事か?‥ 驚かせようと思てなんも話してへんもんな。‥ 話しよか?‥」 「‥ぅん‥‥やっぱりええ。‥訊いたら余計に詮索してまうから。‥ 勝手に悪い方に考えてしまうし‥‥」
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