季節外れの ‥‥20

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俺の言葉にわざと大袈裟に眼を丸くして、 「アホか。アカンがな。‥今夜、いや、今日は昼からずっとお前を堪能しよかって思てたのに。 あ゙ぁー!もう!」 「///‥なっ!何を恥い事ゆうてんねん。」 俺のゆうている事に耳を貸さず、昔と変わりない気の短さで怒りまくっている。 まぁ、ゆうなれば〈激オコプンプン井本丸〉とでもゆうンやろか‥‥‥ 思わず笑いが漏れそになるが、笑ってしまうと火に油を注ぐ事になるので笑いを堪える。 ポチポチとメールを打ち返して 「これでどうや。」と、ドヤ顔で呟く。 「ン?‥」 「いやな、インフルエンザやけど出社してもええン?ってかえしたった。」 「まぁ、嘘とちゃうから‥‥普通は一週間程様子みるしな。‥」 その言葉に嬉しそに反応して 「なぁ、そうやんなぁ。‥ヨッシャァー、俺はズルしてへんよな。」と、昔の様に笑う。 ‥何や、学生の時に戻ったみたいや。 ボンヤリ笑うアイツの顔を眺めているとメールの着信音がし、アイツは直ぐに確認する。 「よしっ!今週休みゲットぉ! なっ。やっぱりそうなるよなっ。」と俺を見る。 「まぁな‥賢明な判断やな。お前が出社して他の奴に伝染したら‥ 集団感染やしな。まっ、会社としたら来ていらんわな。」 「嫌味な言い方やな。」 「やって、仕事にならんやんか。」 「まっそやな。‥けどラッキーや。 一裕と一週間、ゆっくり過ごせるな。」 俺の髪に手をやり猫が眼を細める様に笑う。 俺はアイツから眼を離せずに 「俺も仕事休もかな‥‥」と、つい口走ってしまう。 「クスッ、アホか。そんなんようせんくせに。‥」 俺の傍に来て肩を抱き寄せる。 「今度は俺が一裕の帰りを待つ番や。‥なっ。」 「ぅん。」 照れ臭く食べ終えた食器を片付け始める。 その姿を後ろからクスクス笑いながら見つめられた。 ベランダで洗濯物を干していると窓際にしゃがみこんで煙草に火を点ける。 穏やかな朝‥‥ 煙草の煙が漂う‥‥ ベランダには俺とアイツのシャツ‥‥ 仲良さげにはためく。 空からは柔らかい‥‥ ‥‥まるで春を思わせる様な陽射し‥‥ 俺はアイツの横に座りアイツのポケットから一本の煙草を取り出す。 申し合わせた様にアイツは煙草から火を移せる様にこっちを向く。 まるでキスを交わすかの様に‥‥ 自然に‥‥‥ 二人が憧れていた普通の日常の幸せ‥‥ 今、 手に入ったと思った。
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