季節外れの‥‥3

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先に言い出したンはアイツの方や。 「10分程‥時間あるか?ソコの公園イコや」 不意に腕を離され、前を歩く。その後ろ姿を見つめ歩く。 途中、自販機で 「‥コーヒーでええか?」 「‥‥」 手渡され、寒いから飲まんでも握っとき‥そう言ってベンチに並んで座る。 アイツは缶コーヒーを両手のひらでコロコロと転がし、何かを言い出しかねていた。 俺は‥‥平静を保つので精一杯やった。 口火を切ったのはやっぱりアイツで‥ 「何年振りやろか‥元気にしとった?」 「‥おん‥12年振りやね‥」 「そやね‥」 コッチを向き昔のようにニカッと笑うと、 「良かった‥やっと逢えたわ‥」小さく呟く。 ‥ナンや井本もおんなじ想いやったンや ‥‥逢いたいねん‥‥ そう思った途端に、想いが堰を切って溢れ出した。 「お‥俺、ホンマに‥逢いたかってンで‥」涙が零れる。 「やって‥忘れられヘンやン‥」 頭をクシャクシャッと撫でられ、俺は子供のように泣いた。 俺は、逢いたかった を繰り返し、 アイツは、俺も逢いたかったゴメンな を繰り返してた。 気持ちが落ち着つくと、お互いに聞きたい事が膨らんでくる。 「藤原‥この辺に住んでンか?」 「‥おんっ‥近くや‥‥」 聞いてもええンやろか。幸せナンか? って 「‥なぁ‥今な‥」言い出しかけたのに、携帯が邪魔をする。 「チッ!‥ゴメン電話や‥はいっ? ナンやね  ん!!」 直ぐにキレるのは変わってへンな。 「わかったって! 直ぐに帰るわ」‥はぁ‥‥ 電話をきりため息をつくと、哀しげに俺を見る。 なるべく、明るく笑い 「家からなン? 気ィ付けてな‥」 立ち上がる。手を握られて 「今度ゆっくり話がしたい。連絡先教えて  や‥勝手かも知れん、けどなぁ このま  んま逢えんようにナンの嫌やねん。」
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