季節外れの ‥‥21

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手紙にはただただ、仲良くしてなと書いてある。 「なぁ義行。‥‥どんな人やと思う?」 「そうやねえ、優しそな感じするけどな。 恥ずかしてよぉ入って来られへんって、‥かなりやな。」 「そうやよな。‥‥ええ人やよな。‥‥」 「そらそうやろ。おじさんが12年も待ってた人やから‥‥徳一、心配せんでも大丈夫や。」 「ぅん‥」 二人は大人しく親父のゆう事を聞くことにした。 ガチャっ。 玄関のドアが開く。 中からアイツが嬉しそに笑いながら手招きをする。 「ええで、‥入りぃや。アイツ等には部屋に居るようにゆうたから」 「ぅん‥じゃぁ、お邪魔します。」 小さい声で答えて靴を脱ぐ。 玄関には割りと大きめの脱ぎ捨てられたスニーカー‥‥そして、サッカーボール‥‥‥ 見ていた事に気付いたアイツが、 「あぁ悪いな、‥男ばっかやとナニかと雑いからな。」 そうゆうて靴を揃え始めた。 「クスッ、‥ええよ、そのまんまで。中々元気そうな子やんか。‥ でも、静かやな。さっきまでバタバタとしとったのに。」 「まぁな。‥」 家に入ると、リビングに食事の用意と‥‥と、言っても出前なのだがキチンとお茶の用意までしてあった。 ‥俺、今、‥貴史の家に居るんや。 不思議な感じがする。そして、そんな事を考えると胸が切なくなって‥‥唇を噛み締めてしまう。 そんな俺を見てアイツが 「ほらぁ、また唇噛んで‥‥アカンやんか。赤ぁなってンやン。」と、唇を指でなぞる。 そして、 「こっちや。‥俺の先輩に挨拶すんやろ?」 と、仏間へ案内される。 通された仏間には、まるで夏の向日葵の様な笑顔の女の人の写真。 アイツが線香をたてながら 「先輩‥‥ようやく一裕を連れてこれたで。 ‥なぁ、話通り格好ええやろ。‥ だいぶ心配させたけどな大丈夫やったやろ? なっ、心配せんでもコイツの道は俺に続いとった。 俺‥‥ホンマに待ってて良かった。 先輩‥応援してくれててありがと。」 写真に語りかけるその瞳には懐かしさが込み上げているのがわかる。 ‥いつも、おんなじ時間を過ごしてたんや。 少しの嫉妬と、感謝を感じながらアイツに続いて俺も手を合わす。
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