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「‥有り難うございます。‥‥
俺、貴女に会った事も話をした事も無いけど、‥‥
貴女が貴史の傍に居っててくれて感謝します。
貴女のお陰で貴史は俺を待っててくれたんや、‥だから、今、貴史とこうして一緒に過ごして‥‥歩んで行けます。
ホンマに有り難うございます。‥」
俺は素直な気持ちを吐き出した。
暫く写真を見つめていたが、「そやっ。‥」と、仏壇の引き出しから封筒を一通差し出してくる。
「何やこれ、」
「先輩からの手紙や。‥お前宛に。」
表を見ると、一裕さんへ の文字。
優しそな女らしい字。
手紙を取りだし中を読む。
── 一裕さんへ
‥ごめんなさい。貴方の大事な貴史君を巻き込んでしまって、何と謝ったら良いか言葉が見つかりません。
どんなに謝っても許してもらわれへん事もわかってます。
けど、子供の将来を真剣に考えてくれた貴史君の気持ちに甘えてしまいました。
ホンマに感謝してます。
私は多分、‥貴方に会う事も出来へんやろうから、‥
でも、‥
幸せになってな。
リングはお詫びの印です。私からの物は迷惑かもしれへんけど、‥
貴方と貴史君には幸せになって欲しいから、‥‥
私と籍入れた時に貴史君に渡してあるから。
貴史君との結婚は、私とではなく貴方と‥‥と、ゆう意味も込めて贈ります。
多分、私の子供はやんちゃになってンやろうね。貴方を困らせてしまうかも、‥‥
でも、きっと貴方と貴史君の事‥‥心から受け入れてくれると信じています。
だから、‥
貴史君と幸せになってな。
心から願います。
幸せにならなアカンよ。
‥‥清美
手紙を読み終えた俺の頬には、知らず知らずの内に涙がつたっていた。
見知らぬこの人がこんなに俺の事を心配して、幸せを願ってくれるなんて、思ってもみなかった。‥‥
俺は何も知らずこの人を恨んでいた。‥
俺の方が、俺の方が‥‥と、ずっと思ってた。
でも、本当は、‥‥何の面識も無い俺の事までも、受け入れて、認めてくれて、‥‥そして、
俺の幸せまでも案じてくれた。‥
今までの自分の考えを‥‥
その事を‥‥恥じた。
「‥‥ええ人やな。‥」
俺は真正面に座り直し手を合わす。
そして、‥‥
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