季節外れの ‥‥21

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仏間に呼びにいこうとする足を止めて、 「そやっ、多分俯いたまんまやと思うから、‥‥大きい声出すなや。」 「クスッ、なんかおじさん。‥‥小動物みたいやな。」 「まぁな、図体はでかいンやけど、‥‥」 照れながら頭を掻く。 声出すなや。‥呟く。 二人は静かに座り直して、 「‥なぁ、義行。‥手‥‥握っててや。‥」 「ン? ええけど、‥徳一、緊張してんか?」 汗のかいた右手を握る。 「やって、第一印象が大事やン。‥なぁ、俺変なとこない?」 「クスッ、‥無いよ。いつもの可愛い僕の徳一やで。」と、頬にキスをする。 仏間ではボソボソと話声が聞こえる。 そして、ゆっくりと襖が開く。 親父に続いて俯向き加減の人影が‥‥ 徳一と義行が眼をみはる。 「!!!‥‥」 声にならない声がでる。 然も可笑しそうに貴史は笑っている。 その後ろで貴史の服の裾を掴んだままの人影が‥ 「は‥‥はじめまして。」 と、上ずった声で挨拶をして真っ赤になった顔を上げる。 「‥!???‥!!」 笑いをたたえた貴史の方を見て、一声上げる。 「たっ!‥貴史ーーー!」 「親父!!」 「おじさん‥‥何で先生が‥‥」 「ブッ! ‥あっはっはぁーー吃驚したやろ?」悪戯が成功した子供の様に腹を抱えて爆笑する。 その後ろで顔面蒼白になった俺が‥‥ 「なっ、‥何でお前らが居んねん。」 いつもより1オクターブ高い上擦った声がでる。 「やって、俺ン家やもん。」 「??」 「クスクス。‥先生、おじさんから何も聞いてなかったン?」 「ぅん。‥けど、名字ちゃうやん。」 アイツの方を睨む様に見るとまだ、ケタケタと笑っている。 「そらちゃうよ。やって俺、婿養子やもん。‥やから、今は藤原やで。」と、ドヤ顔で俺の肩に手を置く。 「ちゃんと言うといてや。‥俺、アホみたいやんか。 学校の事よぉ知ってると思たらコイツらに聞いてたんか。」 二人を睨み訊ねる。 「ちゃうで先生。」と否定するが涼しい顔をした貴史が 「そや。」と言い放つ。 「お前らーー!」 「ちゃうって!嘘やん。俺らも知らんかってん。」 「ほんまかぁ?」 「ぅん。やっておじさん一個も話してくれへんし、‥」 「なぁ、先生やったらええのにって話はしてたけど。」 慌てて取り繕う。
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