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(このまんま逢えんようにナンの嫌やねん)
俺もそうやけど‥
「お前には家族がおるんやろ、アカンで‥」
手を振り払い出来る限りの笑顔で言う。
「ちゃ‥ちゃうねん!いや‥そうやけど聞
いて欲しいねん。」
後には退けない、切羽詰まった顔でもう一度手を握りしめる。
‥ソンなんされたら俺‥‥
「‥チッ!‥携帯番号はーー!!」
「大きな声出すなや‥」
条件反射で身体がビクッとなる。
「はょー! ちゃっちゃとゆえや!」
「***-****-****」
‥アカン、ゆうてしもた‥‥
「アハハ‥全然変わってへんな。ビクつかん
でもええやン。絶対に連絡するから」
「俺は‥出ぇへんから‥」
俯いてゆうと、
「かまへんよ。‥俺がしたいからすんねん
だから気にせんでええ‥」
目の前で電話をかけだす。俺のポケットで着信音が鳴り、留守電に切り替わる。
「藤原‥今日は逢えて嬉しかった。この番
号、登録しといてや‥夢みたいに思いた
ないねん。やから、絶対に消したらアカン
よ。ほなっ、またかけるから‥」
電話を切りコッチを向いてもう一度同じ言葉を繰り返す。
逢えて嬉しかった。じゃあまたかけるから。
俺は1人きりになり、缶コーヒーに口をつける。
「‥変わってへンのはお前の方や。いっつ
も強引で自分勝手で‥それやのに‥」
留守電の声を訊く。
(今日は逢えて嬉しかった‥)
俺もや‥ホンマに嬉しかった
(夢みたいに思いたないねん‥)
夢やない。お前の声が残ってる。
「‥俺の事考えてくれてる。」
‥ネガティブな考えをせんように‥
ナンでこんな優しいトーンで話すねんなぁ‥
コーヒーが冷たくなるまでずっと聞きたかった声を、何度も訊いていた。
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