季節外れの‥‥4

4/5

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
義行は切ない想いに胸が傷むと同時に、おじさんの徳一への優しさを感じた。 徳一とおじさんの関係が特異なものと訊かされていたが、ここまでできるものなのだろうか。 ‥一種の《自己犠牲》? 徳一の母との約束って何なんやろ。 「なっ、オヤジ無理してるやろ。絶対誰かおんねんて‥」 「ホンマやね。」 「きっとな何かあんねんて、高校入ってからスッゴク多いやン‥」 徳一が心配するのもわかる。学校行事がある度に、切なく語っている。 「けど、やっぱりソッとしておいた方がええって‥」 「やけど、今日のオヤジの態度やと もしかしたらこの人に逢えたんかなって‥あんなン、初めてやン‥」 思い出してみると確かにそう思う。僕も、理由も無く癇癪をおこすのを見たことがない。 「それやったら余計に何もゆわん方がええンとちゃう?」 「‥おん‥でも、俺の為ばっかで自分の幸せ逃してンとちゃうンかな‥」 実際にそうだったとしても、僕たちにはどうもできない。 「‥おじさん僕たちの事、認めて見守ってくれてるやン‥それが今日初めて口に出して信用してくれた。」 僕は徳一に諭すように話す。 「段々と一人前扱いしてくれてる。だから、きっと自分の幸せを考える余裕が出来てくるから‥話してくれるまで、ソッとしとこや‥」 そう言って日記を閉じて 「元の場所に置いといで。」 「‥おん‥」
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加