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義行は切ない想いに胸が傷むと同時に、おじさんの徳一への優しさを感じた。
徳一とおじさんの関係が特異なものと訊かされていたが、ここまでできるものなのだろうか。
‥一種の《自己犠牲》?
徳一の母との約束って何なんやろ。
「なっ、オヤジ無理してるやろ。絶対誰かおんねんて‥」
「ホンマやね。」
「きっとな何かあんねんて、高校入ってからスッゴク多いやン‥」
徳一が心配するのもわかる。学校行事がある度に、切なく語っている。
「けど、やっぱりソッとしておいた方がええって‥」
「やけど、今日のオヤジの態度やと もしかしたらこの人に逢えたんかなって‥あんなン、初めてやン‥」
思い出してみると確かにそう思う。僕も、理由も無く癇癪をおこすのを見たことがない。
「それやったら余計に何もゆわん方がええンとちゃう?」
「‥おん‥でも、俺の為ばっかで自分の幸せ逃してンとちゃうンかな‥」
実際にそうだったとしても、僕たちにはどうもできない。
「‥おじさん僕たちの事、認めて見守ってくれてるやン‥それが今日初めて口に出して信用してくれた。」
僕は徳一に諭すように話す。
「段々と一人前扱いしてくれてる。だから、きっと自分の幸せを考える余裕が出来てくるから‥話してくれるまで、ソッとしとこや‥」
そう言って日記を閉じて
「元の場所に置いといで。」
「‥おん‥」
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