季節外れの‥‥5

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身体が鈍ってるのだろうか。息があがる。 軽く駅前を通り過ぎ、川沿いを走る頃には、綺 麗な朝焼けが見え始める。 昔、アイツとよく観た風景。 冬場の朝練の時はいつもそうやった。 けど‥あの頃より色褪せてみえる。 前を、あの頃の俺達みたいに歩いているのは? 制服姿の徳一と義行 やン。 朝っぱらから仲ええがな‥ 声を掛けず横を走り抜ける。 後ろから急に 「先生ー!おはよー!」 ‥あぁ、気付いてたンや。 少し速度を落として、 「おはよう」と、答える。 「先生ー、身体鍛えてンの?」 「‥いや、鈍ってこんように‥」 二人に並び少し呼吸を整える。 「‥もしかして、朝帰りか?」何気なく聞く。 真っ赤になった二人はお互いに顔を見合せたあと、 「内緒やで‥」と徳一が言い自転車に義行を乗せた。 ‥いやいや、友達ン家に普通泊まるやろ。  夜遊びか?って意味やン‥  思わず《抱いたン?》って訊くトコやン‥ 自分等で関係をバラすとは思ってなかった。 そんな嘘さえつけない二人が、可愛く思え羨ましかった。 それに引き換え俺は‥‥ 並走している自転車の後ろから 「先生?何かあったン?寂しそやな。」 俺は聞こえない振りをした。 「先生ー、朝から暗すぎやン。」 「アハハハーちゃうよ、色々あんねんなぁ。」 と、義行がニヤッと笑う。 「まぁな‥」答えながらも、 ‥義行、コイツ案外曲者やな‥
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