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朝練が終わるまで義行は保健室で俺と過ごす。徳一が朝飯をここで食べて授業に出るからだ。
大抵は徳一との出来事を嬉しそに話すのだが、やっぱり不安が募るのだろう。
その都度、好きになる気持ちに後ろめたさを感じないように‥
俺自身にも言い聞かすように‥
「何か手伝おか?」
「ええよ、そこから徳一でも眺めてィ」
少し顔を赤くして、茶かさンとって
と小さく云い
「‥先生って忘れられへン人居ンやろ?」
ズキッと鈍い痛みが貫く。
手に持ってたプリントが落ちる。
コッチを振り向きもせず、
「見てたらわかるよ‥今でも好きなンやろ?」
「‥頼むわ‥個人的な事は、勘弁してや‥」
体を屈め拾いあげる。
「世界中の不幸を背負ってる顔してンで‥」
「‥(コイツは、何で人の心を見透かすねン)‥」
「僕ナァ‥、徳一との事先生に話訊いてもらえて嬉しいねン。好きになる気持ちはアカン事やないってゆわれて楽になってン‥‥好きになってから僕、ずっと辛かってン。‥けど、先生と出逢って一人で悩むンはアカンって知ってンな。」
目線はずっと徳一を追いかけている。
「‥どんな人なン?」
「そやな‥説明しにくな‥」
傍に椅子を置いて並んで徳一を眺める。
「前にゆうたけど、徳一に似てるン?」
「サッカーが好きなとこだけな‥」
チラッと見て、
「クスッ‥正直やないな。恥ずかしンやろ‥ホンマに乙女やな‥」
「‥やめてや」
「また、ゆっくりと話してな。」
義行の頭をポンッと叩き、内緒にしてくれるンやったら と笑うと
「当たり前やン‥僕のも徳一に内緒やで」
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