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放課後になるとまた、義行はやってくる。
今までは図書室やクラブに出ていたのだが、徳一を待つのに丁度良いらしくずっと入り浸っている。
徳一は気が気でないらしく俺に八つ当たりをするが、他の奴よりマシらしい。
教科書を開きながら、
「先生、ずっと携帯気になってンなぁ。誰からか連絡待ってンの?」
「‥マァ‥そんなとこかな‥」
言い当てられて反論の余地がない。
「待ってンとかけたらええやン‥」
「ほっとけや‥」
携帯をポケットにしまいこむ。
「先生の事やから難しに考えてンやろ?」
「かけへンって決めたンや。」
「フーン、変わってンな。」
宿題を始めだした。
俺はコーヒーを淹れてボンヤリ窓の外を眺める。
ふと義行が
「先生の好きな人の事教えてや」
「‥いやや」
「何でなン?僕も話してるやン。」
自分でコーヒーを淹れて俺の隣にくる。
「優しい人?」
「‥マァ‥そんなとこかな」
アイツの顔が浮かぶ。
「 長い事逢ってなかったから‥ 」
「じゃぁ最近は?逢えたン?」
「この間偶然にな‥」
掴まれた手首を見る。
ジンジンと傷みが振り返す。
ハァ‥と口から吐息が洩れ、胸が痛む。
「先生って、その人の事考えてる時 色っぽいけど、哀しそやな‥」
「‥なんやそれ、大人になると色々あんねん。」
視線をコーヒーに落として、今度はため息をつく。
「 ナァ‥先生、好きになるって案外難しナァ‥」
「‥せやな、真剣な程相手の事考えてしまうしな‥」
「うん、そやな‥」
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