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勘の良い義行は無理には何も訊いてこない。きっと俺より大人なんだと思う。
そんな義行の悩みは、徳一と父親の関係らしい。
「信頼されてンやったらええやン」と、毎回ゆうのだが
「メールで《頼むわ‥》ってゆわれたら‥何かなぁ、《わかってンやろな!》みたいな感じで‥」
心底困ったように笑う。
「中々手強い相手やな。母親の方は?」
「ゆうてなかったっけ、居らへンねん。調査票見てないン?」
不思議そに訊くから、俺は個人的なものは見ンようにして相談を受けている事を説明した。
先に情報が入り過ぎると先入観にとらわれて、相手をきちんと見れなくなるからだ。
だから、相談を受けてから本人の口から訊くように心がけていた。
「じゃぁ、僕のも見てないン?」
「あぁ、お前は校長先生から色々訊いてるからな。」
「それはそれでムッチャ、恥ずかし‥」
たわいない話に気持ちが安らぐ。きっと、俺を気遣ってくれているのだろう。
「何かあったら俺が間に入ってやンで。なんやったらオヤジさん説得したろか?」
「はぁ?アカンって、絶対に無理や!普通やないから‥」
大慌てで首を横にブンブン振る。
「あははー、普通やないってどんなんやねん。」
「尋常やない過保護と、ファザコンやから。」
「おもろいやン。見てみたいな、間に挟まれたお前。」
絶対にアカンって、と云いつつも楽し気に笑う義行を見て、このまま徳一と一緒にいつまでも笑ってられるようにと思った。
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