季節外れの‥‥5

18/21
前へ
/343ページ
次へ
部屋にコーヒーのいい薫りが漂う。 マグカップを2つ持って座り直し、机に置く。 「コーヒーはいったよ。」 「‥ありがと、」 やっと顔をあげて、両手で温かさを確かめるように持ってため息をつく。 「クスッ、ため息ついたら幸せ逃げてしまうで。」 チラッと義行を見て、 「逃げる程、幸せなんかあらへん‥」 そう言ってコーヒーを飲む。 「アハハー、その感じやったらええ電話やったンやろ?昼にかかってくるなんて、僕の知ってる限りじゃぁ‥初めてやン‥」 図星を突かれて義行を睨む。 中々口を開かない俺に淡々と話を続ける。 「話してや、僕にはゆうてや‥先生と生徒やなく、おんなじ悩みの抱えてる者として。」 ジィーっと顔を見ると、ニッコリ微笑み、なっ訊かせてや‥と俺にゆう。 ‥情けないなぁー、こんなに心配かけて。 「俺、先生失格やな‥」 「何で?先生かてただの人間やン‥悩む時もあるって、」 「‥」 言い返す言葉が見つからない。 「先生の様子が変やぁって皆ゆうてんで。案外先生って人気あんねんで、」 思い出したのかクスクス笑い出す。 「今日は暇やったやろ?」 「おん。 」 「誰か知らんけどな、《先生悩んでるみたいやから今日はそっとしとく事》って言い出したから」 「嘘やろ?確かに昼休みに誰も来ィひんかったけど‥」
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加