季節外れの

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新年を迎えて、気持ちの切替のため、赴任先に近い神社に初詣をする。 学校よりも少し小高い場所にあり、小さいながらも清浄な雰囲気を醸し出す良い神社だ。 石段を上り詰め鳥居をくぐる。 ‥懐かしなぁ‥全然変わってへん  よぉ~相談事がある度にアイツときたな ここから学校を眺めて話したり、ふざけたりした。 あぁそや‥インターハイの前にもお参りしたわ‥ 大学の進学の相談もここやった。 あの日の朝もここで二人でおみくじ代わりに願い事書いて‥‥ ‥今でもあるやろか‥  12年前のが‥‥  社の後ろに周り、踏み板に隠すように中に入れた紙切れを探す。 流石に黄色に変色していたが‥‥ 懐かしい文字‥ 『ホンマは井本と一緒に居りたい。』  叶わへん‥俺の願い事や‥‥ 『藤原 大学合格!応援してんで』  ‥そんなもん要らんかった‥‥ やけど‥ありがとな ‥今ここに戻ってこれたんも‥  今まで頑張ってこれたんも‥  全部お前のお陰や‥ 紙を元の場所に隠す。 その傍にもう一枚の少し変色している紙。 『藤原、俺結婚したわ ごめん  けど 勝手やけど‥‥‥』 後は雨に濡れたらしく文字が滲んで読めない。 不思議と涙が出てこない。 今でも好きな気持ちには変わりないのに‥ ‥現実味がない‥ ‥もしも、本当やったら   幸せで居てて欲しい   俺の事には構わず幸せで居って‥ 頬に温かいものが流れ落ちた。
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